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愛は僕等を救わない
01



着いたのは「死の森」だった。イルカ先生が危険だから絶対入るなって言ってた場所だ。大きな柵で仕切られているが此所からでも充分森の薄気味悪さが伺える。
派手に登場した女性の第二試験官によれば此所が試験会場らしいが…恐らくこの森の中でやるんだろうなぁ。

「ここが"死の森"と呼ばれる所以、すぐ実感する事になるわ」

死の森、名前からして嫌だ。夢の森とかだったら怖さなんて感じないのに。

「脅してもぜんっぜんへーき!怖くないってばよ!」

試験官の台詞をそのまま真似し依然としてナルトは強気だった。

「そう…君は元気がいいのね」

ナルトの態度に怒る様子も見せずニコッと笑う。
だがその笑顔とは裏腹に忍ばせていたクナイをナルトに向かって投げた。

「アンタみたいな子が真っ先に死ぬのよねェ…」

クナイはナルトの頬を霞め、血が流れる。いつの間にかナルトの背後に移動し肩に手を乗せその血を舐める。
うわあ…怖い。目の前で起こった光景に声も出ず他人事の様に見ていた。同じ班でも僕にとっては他人事だが。

「クナイ…お返ししますわ…」

「わざわざありがと」

笠を深く被った長身の人が異常なまでに長い舌にクナイを絡み試験官に渡した。その舌はまるで蛇みたいだった。笠のせいで顔は見えない。

「でもね…殺気を込めて私の後ろに立たないで。早死にしたくなければね」

「赤い血を見るとつい疼いちゃう性質でして…それに私の大切な髪を切られたんで興奮しちゃって…」

興奮って、つまりはイラっとしたって事か。確かに綺麗な黒い長髪だった。

『頬…大丈夫?』

「ああ、これくらい平気だってばよ」

血が結構出ていたが見た目よりは痛くないみたい。

「それじゃ第二の試験を始める前にアンタ等にこれを配っておくね!」

同意書と大きく記された用紙を見せた。
このさき死人も出るらしく同意をとらないと試験官の責任になってしまうからと。本当に出るのか怪しいが。先程の試験だって僕は全問空白で合格した。その代わり物凄く緊張したし不安になったりもした。だが最後の最後で合格…中忍試験というのは案外簡単なのかと思う。なので死人が出るというのも嘘だったりするかも。

同意書を受け取り第二の試験の説明聞く。

「この第44演習場は…鍵のかかった44個のゲート入口に円状に囲まれてて川と森…中央には塔がある。その塔からゲートまでは約10km…この限られた地域内であるサバイバルをこなしてもらう」

その内容は各々の武具や忍術を駆使した何でもありの「巻物争奪戦」…また長い話を聞き僕なりに簡単に解釈すると、天の書と地の書の二つの巻物を巡って闘う。ここには26チームいるのでその半分の13チームは天の書を、もう半分には地の書を1チームずつひと巻渡される。
そして天地両方の書を持って中央の塔まで班全員で行く事が合格の条件だ。

「半分が確実に落ちるってことね」

『そんなに…』

ここで一気に落とされる。

「ただし時間内にね。この第二試験、期限は120時間。ちょうど五日間でやるわ」

『ながっ』

一日で終わると思ってなかったがまさか五日間とは…。

「五日間!!」

「ご飯はどーすんのォ!?」

いのちゃんとチョウジが声を上げた。チョウジらしい質問だ。

「自給自足よ」

あっさり言うがそう簡単に食べれそうな物が見つかるとは思えない。森は野生の宝庫と言うが…「ただし人喰い猛獣や毒虫、毒草には気をつけて」付け足された一言に不安を感じた。

「それに13チームが合格なんてまず有り得ないから。なんせ行動距離は日を追うごとに長くなり…回復に充てる時間は逆に短くなってゆく。おまけに辺りは敵だらけ。迂闊に寝る事もままならない」

試験官の話を聞く限りだと大変そう。
負傷者や死者が必ず出るというがまだ自分が中忍試験を受けてる、これから五日間サバイバルするという実感がいまいち湧かずどこか他人事。

「続いて、失格条件について話すわよ!まず一つ目…時間以内に天地の巻物を塔までチーム全員で持ってこれなかったチーム。二つ目、班員を失ったチーム、又は再起不能者を出したチーム」

ルールとして途中のギブアップは一切無しで五日間は森の中。

「もう一つ…巻物の中身は塔の中に辿り着くまで決して見ぬこと!」

そう言われると見たくなるのは人間の性。

「途中で見たらどーなるの?」

「それは見た奴のお楽しみ」

見た者に害がないなら、試験官にバレないなら僕は見るかもしれない。受験者の信頼性を見る為と言うなら見ない…多分。

「説明は以上。最後にアドバイスを一言…死ぬな!」

果たしてそれはアドバイスと言うのか。まるで僕等が死ぬみたいな…。


同意書と巻物を交換し僕等の班はゲート12になった。

「これより中忍選抜試験第二の試験!開始!!」

「よっしゃあ!!行くぞ!!」

ナルトの叫び声と共に死の森へと踏み込んだ。








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