愛は僕等を救わない
02
『…何してんだよ』
「誰だお前」
「ソラ!」
『何してんだって聞いてんだよ』
「うるせぇな、俺…大体チビって大嫌いなんだ。おまけに年下の癖に生意気で…殺したくなっちゃうじゃん」
「あーあ、私…知らねーよ」
「なっ…」
真面そうに見えた女の方もおかしい。何故止めない?
『何言ってんだ!その手を放せ!』
「うるせーな。お前はすっこんでろよ」
久々に物凄くムカついた。なんて言い返そうか考えているとその時、小石が黒服の奴の腕に当たり放された木ノ葉丸は地面に尻餅をついた。
「よそんちの里で何やってんだてめーは」
「サスケ君!」
小石が飛んできた場所を見ると木の幹にサスケが座っていた。
「キャーカッコいいー!!」
サクラちゃんの目がまたハートになってる。でも今のはタイミングが良かった。帰ったと思ってたのにまだいたなんて。
「ナルト兄ちゃんカッコ悪り〜」
『大丈夫?』
「うん。もう平気!ソラ姉ちゃんカッコよかったコレ!」
『助けたのは僕じゃないけどね』
怪我はしてないみたいだ。よかった。
「おい…ガキ降りてこいよ!俺はお前みたいに利口ぶったガキが一番嫌いなんだよ」
どこかで聞いた事ある台詞。君も充分子供だと…僕等よりは年上っぽいが。
「おい、カラスまで使う気かよ」
背負っていた物を下ろすと包帯に巻かれた奇妙な物を地面に置く。先程から気になってた、あれはなんだろう。カラスと言ってたな…。女の方も背中にハリセンみたいなの持ってる…扇子か?
「カンクロウやめろ」
声のする方を見れば木の幹にぶら下がる赤髪の少年がいた。ぶら下がったというより波の国で修業した木登りの様にチャクラで枝に吸着している。やはり黒服の男と同様に目のまわりを黒く縁取ってあり額には「愛」と書かれてあった。あれも化粧なのかな。
「里の面汚しめ…」
小さい身体には不似合いな大きな瓢箪を背負っている。重くないのだろうか…何入ってるんだろう。水?
二人の男女はその少年を見た途端怯えた表情をした。先程とは全く違う。少年が来て空気が変わった。他の人とは何かが違う、そう感じた。
「ガ…我愛羅」
「喧嘩で己を見失うとは呆れ果てる…。何しに木ノ葉くんだりまで来たと思っているんだ……」
「聞いてくれ…我愛羅、こいつらが先につっかかってきたんだ…!」
「黙れ…殺すぞ」
僅かだが殺気を放つ目付きに自分まで恐怖を感じた。その言葉に偽りはないようだ。
「わ…分かった。俺が悪かった」
「ご…ご…ゴメンね」
この少年には随分と低姿勢だ。先程の威勢はどこにいったのやら…畏れてるのか?それにしても…
『綺麗な髪…』
「何か言ったか?」
『あ、なんでもない』
目が合った。すぐに逸らされたが。声に出すつもりなかったのに。
初めて会った感じがしない。既にどこかで会ったような…赤髪の少年に酷く惹かれた。
「君達悪かったな」
木の枝から男女二人の元へフッと一瞬のうちに移動した。
「どうやら早く着きすぎた様だが俺達は遊びに来たわけじゃないんだからな…行くぞ」
「ちょっと待って!貴方達…砂隠れの里の忍者よね。両国の忍の勝手な出入りは条約で禁じられてる筈…。目的を言いなさい!」
「灯台下暗しこの事だな」
そう言って女の人は通行証を出した。
「お前の言う通り私達は砂隠れの下忍…。中忍選抜試験を受けにこの里へ来た」
「…中忍選抜試験?」
「砂、木ノ葉の隠れ里とそれに隣接する小国内の中忍を志願している優秀な下忍が集められ行われる試験の事だ」
『ほー…』
「何で一緒にやんの?」
「同盟国同士の友好を深め忍のレベルを高めあう事がメインだとされるがその実隣国とのパワーバランスを保つ事が各国の緊張を…」
『ふぁ…』
説明してもらってるとこ悪いが欠伸が出る。なんだか難しい話しは苦手。眠くなる。
「俺も中忍選抜試験ってのに出てみよーかなぁ!?」
『良いと思う』
「ソラもだってばよ!」
『んー…どうしよっかなぁ』
「質問しといてこのヤロー!最後まで聞けー!」
『ごめん…』
僕が質問した訳じゃないのに…反射的に謝ってしまった。
「おい!そこのお前…名は何て言う?」
「わ…私か?」
「違う。その隣りの瓢箪だ」
「…砂漠の我愛羅。俺もお前に興味がある…名は?」
「うちはサスケだ…」
「藍色の奴…お前の名はなんだ」
藍色の奴とは僕のことだろうか。真っ直ぐ僕だけを見つめる。もしかしなくても僕に聞いてる。
『…如月ソラ』
何故僕の名前何て聞いたんだろう。何かした?いやまだ会って数分…何もしてない。
「ソラって確か…」
なんだか僕の名前を聞いて女の人が難しそうな顔をしたが「いや違うか」と独り言を言ってる。何が違うのか聞きたいが聞けない。
「あのさ!あのさ!俺は?俺は?」
「興味ない。…行くぞ」
なんかナルト可哀想。
「…何でソラは聞かれて俺は聞かれないんだってばよ」
『そんなの僕が知りたい』
ちょっと怖かったけどもっと話してみたかった、なんて思ってしまった。
「俺ってば弱そうに見える?」
『うーん…普通』
「サスケの兄ちゃんよりはね!コレ!」
まぁ…本当の事だけど。
「そういえばソラどうしたんだってばよ」
『いや…家の鍵落としちゃって』
そう言ったらサクラちゃんに呆れられた。僕にとっては大事な物なのに。
「ソラ」
『ん?…うわっ』
サスケが投げてきたものを物を両手でキャッチした。
掌を見ると見覚えのある銀色の鍵があった。
「それお前のだろ」
こくりと頷きどうしてサスケが持ってるのか尋ねると「たまたま拾った」返ってきた。
たまたま…か。
『ありがと』
それだけ言うと今度は無くさないよう手に握りしめ帰った。
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