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愛は僕等を救わない
01

以前は時々だったのだがここ最近は頻繁に同じ夢をみる。
それはとてもではないが良い夢とはいえず、丑三つ時等まだ暗い時間帯に起きれば大量の汗を掻いている事が多く泣いてる時もあった。その後はどうも寝付けず、そのせいでいつも寝不足…。

ただ、今日の夢は違った。



気付けば薄暗いひんやりとした部屋にぽつんと僕だけ立って居た。
今は夜なのだろうか、辺りは暗く足下を照らすのは僅かな月の光だけ。青白い輝きを放つ月が今日は何故か不気味に感じた。
微かにツンと鼻を刺す様な異臭…鉄の臭いがする。

グチャッ
『!?』

何か、踏んだ。
恐る恐る足下に目を向けるとそこには死体が横たわっていた。
顔を見ただけでは性別が分からない程に見るも無惨な姿。

此処は一体…目を凝らせば部屋中に無数の死体が横たわっていた。

途端に鼻を突き刺す様な異臭。
顔が引きつる。
吐き気がする。
気持ち悪い。

部屋の中をある程度見渡せば人一人いない―…



いや、一人居た。
僕より幼い女の子だ。
そしてその子から啜り泣く声が聞こえる。
床にしゃがみ込み、手で顔を覆っている為表情はよく見えない。

ここまではいつもと同じだった。


違うのは今回は僕が少女に話しかけたという事。

『どうしたの?』

遠慮がちに話しかけたが反応は無い。依然としてなおも泣いている。

少し距離があった為聞こえなかったのかと思い、ゆっくりと一歩ずつ少女へ歩み寄る。

『だいじょう…』

もう一歩近付こうとした時だった。

突然ガシッと足首を何かに掴まれ反射的に振り向いた。

『っ…!!』

足を掴んでいたのは先程見た死体の手だった。
恐怖で顔が歪む。
助けを呼ぼうとしたが声が出ない。

「助け…て…」

自身を引きずり血に塗れた顔を僕に向け悲願する。声にならない叫びを上げ、足をジタバタ動かし手を祓った。

そして近くに在ったクナイを掴み無我夢中で何の迷いも無く相手に刺した。

殺らなきゃ自分が殺られると思い狂った様に何度も、謝りながら。


暫くして動かなくなり絶命したと分かると罪悪感で胸が締め付けられた。
手には人の肉を刺した感触がまだ残っている。
(殺してしまった…)


だがそれも少女の泣き声で消えた。

「うっ…う…っグス」


嗚呼、お願い泣かないで。

何も怖くないから。

そう、何も――



「…お前…が…」


先程まで泣いていた少女が口を開いた。


「お前の…お前のせいだ」

今まで見えなかった憎悪に満ちた顔が露になる。

見てはいけなかった。

見てはいけなかったんだ。

少女の瞳からは真赤な血が流れ、体は血だらけだった。

『あ…あぁ…っ』

頬から落ちた水滴は床を濡らす。
恐怖で泣いているのではない。見てしまったから。


「お前が殺したんだ!」



僕に酷似していた。
瞳の色も、髪の色も…全てが。




そう、間違なくあれは僕だったんだ―




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あきゅろす。
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