愛は僕等を救わない
04
「お前ら安心しすぎ!」
今まで忘れかけてたガトーの部下が一気に調子に乗り出す。
「拙いな…」
数なら圧倒的に敵の方が有利だ。
「カカシ先生どかーっとやっつけちゃう術なんかないの?」
「無理だチャクラを使い過ぎた!」
カカシ先生は再不斬との戦いで体力をかなり消耗した。傷口だって深い。これ以上頼るのは無理だ。
「これ以上この島に近づく輩は…島の全町民の全勢力をもって?生かしちゃおかねェッ!!」
丁度良くイナリ君が武装した町の人々を引き連れて現れた。かなり心強い。
「(今のチャクラでも…ハッタリにはなるか…)」
カカシ先生が影分身をしたが血まみれで傷だらけが大勢現れある意味迫力があって怖かった。
その迫力に負けてガトーの部下達は逃げていった。
「カカシ…頼みがある」
地面に俯せになり動けない再不斬が口を開く。
「あいつの顔が…見てェんだ…」
「ああ…」
再不斬を白の隣りへ運んだ。
『あれ…雪降ってる』
こんな時季に珍しい。まるで再不斬と白の為に降ってるみたいだ。
「できるなら…お前と同じ所に…行きてェなぁ…」
その言葉を最後に再不斬は喋らなくなり命を絶った。
「…コイツ雪の沢山降る村で生まれたんだ…」
「…雪の様に真白な少年だったな…」
二週間後
再不斬と白の墓を作り花と饅頭を供えた。その饅頭を食べようとナルトが手を伸ばしたがサクラちゃんによって食べずに終わった。食べてないとしてもバチ当たりな…。
「カカシ先生…忍者の在り方ってやっぱこの二人が言ってた通りなのかなぁ…」
「忍ってのは自分の存在理由を求めちゃあいけない。ただ国の道具として存在する事が大切…それは木ノ葉でも同じだよ」
「本物の忍者になるって本当にそういう事なのかなぁ…俺ってばそれやだ!」
『それは僕も思う』
「アンタもそう思うのか?」
アンタって…仮にも先生なのにそう呼ぶのか。想像して後悔した。サスケが「カカシ先生」って呼ぶのも気持ち悪いか…。
「んーいやな…だから忍者って奴は皆知らず知らずその事に悩んで生きてんのさ。…再不斬やあの子の様にな…」
「よし、今決めたってばよ!」
『何を?』
「俺は俺の忍道を行く!」
自分の忍道か…いいかもしれない。
「おかげで橋は無事に完成したが…超寂しくなるのォ…」
「タズナのオッチャンまた遊びに来るってばよ!」
「絶対…か…」
イナリ君の瞳が潤んでる。鼻水出てるし今にも泣きそうだ。
「イナリィ…お前ってば寂しんだろ〜。泣いたっていいってばよォ!」
「泣くもんかァ!!ナルトの兄ちゃんこそ泣いたっていいぞ!!」
「あっそう。…じゃあな…」
『……』
イナリ君には素っ気ない態度を示し背を向けるが泣いてる。素直じゃないなぁ。
「ソラ姉ちゃんっ!」
『んー?』
振り向くと涙と鼻水でグチャグチャな顔のイナリ君が目に入った。
「また…またな!」
『…バイバイ』
そう言って微笑んだ。
「よーし!早く帰ってイルカ先生に任務終了祝いのラーメン奢ってもらおーっと!」
それに木ノ葉丸に武勇伝聞かせるやろうとナルトは楽しそうだ。僕は疲れた、家に帰ったら直ぐ寝たい。
「ね!サスケ君里に帰ったらデートしない?」
「いや、断る」
「そ…そんなぁ…」
「あのさ!あのさ!俺ってばいいよ!」
「煩い!黙れ!ナルト!」
『あははっ!』
サクラちゃんは…サスケをデートに誘ったが呆気なく断られた。三人の会話がおかしくて笑ったら皆一斉に僕を見た。
『なっ…何?』
「ソラが…笑った」
「こんなに笑ったソラ初めて見たってばよ!」
『……』
そう言われてみればあまり笑わない方かもしれないが…。
『僕だって笑う時は笑うよ』
「いつも笑ってればいいのに」
『…心がける』
そう言ってみせるが、感情を出すとは僕らしくないというもの。決して本当の感情はさらけ出してはならない。それが最大の自己防衛。精一杯の逃げ。これしか方法がないというなら、このまま生きるしかないだろうに。
(怖いんだ、全てを晒け出してしまうのが)
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