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愛は僕等を救わない
02






「憐れなガキだ」

初めて声を掛けられた。絶望の中、ただ存在していただけの僕に光を射してくれたのは再不斬さんだった。

「お前みたいなガキは誰にも必要とされずこの先自由も夢もなくのたれ死ぬ…」

再不斬さんは僕が血継限界の血族だと知って拾ってくれた。誰もが、親までもが嫌ったこの血を…好んで必要としてくれた。

「今日からお前の血は俺のものだ。ついて来い!」

あの言葉がどれほど嬉しかったか。
僕はあの言葉に救われた。傍にいれるなら言いつけを守るただの道具でも良かった。

僕は僕の夢の為に。
君達は君達の夢の為に。


「…恨まないで下さい。僕は大切な人を護りたい…。その人の為に働き、その人の為に戦い、その人の夢を叶えたい…それが僕の夢」

あの時からの、夢だった。

「その為なら僕は忍になりきる。あなた達を殺します」

殺すと宣戦布告したのにこの二人は顔を歪めるどころか面白そうに頬を上げる。




『霧が濃くなって…』

傍に居るタズナさんの姿も霧に消されてしまう。もっと近くに居ないと…これじゃ何も見えない。

「タズナさんを頼むぞ!」

カカシ先生は再不斬と本格的に戦い始めたようだ。霧が濃いせいで見えないが手裏剣やクナイ等の音が聞こえる。

「タズナさん私から離れちゃダメよ!」

サクラちゃんが戻って来ると先程と同様二人で護衛する。
大丈夫かな…カカシ先生は勿論サスケとナルトも心配だ。幾ら二人いて人数では勝っているというもののあの奇妙な術の前ではサスケは手も足も出なかった。
…駄目だな。今は皆を信じなきゃいけないのに。それが僕に出来る唯一の事だから。


『え?』

「遅い!!」

後ろを振り返れば大きな刀に手を掛けタズナさんに振り下ろそうとする再不斬とそれを止めようとするカカシ先生がいた。

「きゃあああああ!!」

『カカシ…先生…』

胸元を深く切られ沢山の血が地面に落ちる。

「…大層な眼を持っててもよ、敵の動きを読む力が鈍ってるぜ」

僕達に怪我をさせまいと庇ったばかりに…。

「心配しなくてもガキ共は白がそろそろ殺してる。お前もすぐ奴等と同じ場所に送ってやる。精々あの世で己の力の足りなさを泣きながら詫びるんだな」

それがおかしいのか再不斬は声を上げて笑った。

『あの二人は死なない!』

「サスケ君はあんな奴に簡単にやられたりなんかしないわ!!ナルトだって!!」

「その通りだ…。俺はあいつらの強さを信じてる。ナルトの意外性…サスケは木ノ葉の最も優秀な一族の正統血統!」

「まさか…」

「そうだ。あのうちは一族の血継限界をその血に宿す…天才忍者だ!」

「だがそれは白とて同じ事。白の秘術を破った者はいない。過去一人としてな…」

印を組むと霧の中へ消えた。
動くなとカカシ先生に言われまたサクラちゃんとタズナさんの傍に寄る。
カカシ先生は再不斬を追い霧の中へ駆けた。




「超濃かった霧が段々晴れてきたぞ…」

『本当だ』

まだ霧はあるものの先程より周りが見やすくなった。

「あそこに二人!睨み合ってるみたいだけど…」

サクラちゃんの言う方向には確かに二人がボヤけて見える。目を細めて見るがボヤけたまま。どちらがカカシ先生だろう…。

「動いたっ!!」

突然物凄い風圧を感じ一瞬目を閉じたが開けると周りの霧は晴れていて二人の姿がハッキリ見えた。いや、二人ではなく三人だ。カカシ先生の腕はお面の取れた白の体を突き抜けていた。恐らく再不斬を庇って白が刺されたんだ。あまりに惨い姿にサクラちゃんとタズナさんは絶句した。

『…あの時の、』

会った時から誰かに似てると思ったんだ。漆黒の長い髪、アルトの声…大量の血を流し立っているのは間違なく森で会った綺麗な人だった。








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