愛は僕等を救わない
02
場所は変わって森の中。カカシ先生は松葉杖を付き僕達の修業に付き合う。
「では、これから修業を始める」
「押忍!!」
物凄いヤル気。そういえばタズナさんの家の中ずっと楽しそうにしてたな。
「その前に忍としての能力、チャクラについて話そう」
「あのさ!あのさ!チャクラってなんだったっけ?」
ちょっ僕に訊くの?隣りに居たからかもしれないがこういうのはサクラちゃんかサスケに訊いた方が…。
『うーんと…術を使う時必要なエネルギーじゃなかったっけ、』
「そうなの?」
『…多分』
そんな感じのだった気がする。合ってるかと訊かれたら自信無い。
「まぁ、合ってると言えば合ってるが…」
「アンタ達それでよく忍者やってるわね。学校で何習ってたの?」
「俺ってば難しい授業寝てばっかだったからなァ…」
『同じく』
カカシ先生にも呆れられた。殆ど話訊かないで寝てたのは事実。
「はい、サクラ君」
促されサクラちゃんがチャクラについて簡単に説明してくれた。
チャクラには大まかに分けると二つの身体エネルギーと精神エネルギーので構成されてる。"術"というのはこの二つのエネルギーを体内から絞り出し練り上げ、というプロセスを辿って発動される。
『へー』
「そんな難しい説明は分かんないけどそんなの体で覚えるもんだろー!」
「ナルトの言う通りだ。現に俺達は術を使えている」
「いーやお前らはまだチャクラを使いこなせていない!」
「何ィ!」
「まぁ訊け…」
幾らチャクラの量を多く練り上げる事が出来ても術によってバランスよくコントロール出来なければ術の効果が半減してしまうばかりか下手をすると術自体が発動してくれない。そしてエネルギーを無駄遣いしてしまう為長い時間闘えない…等の弱点が出来てしまう。
とカカシ先生がながーく説明した。
「体でそのコントロールを覚えるんだ。命を張って体得しなきゃならないツラーイ修業!」
嫌だな…辛い修業。根性が無い僕に耐えられるかな。
「なっ…何をやるの?」
「木登り…!」
思いも寄らぬ言葉に拍子抜けした。
簡単そうと思っていたがただの木登りではなく手を使わないで登る。無理なんじゃ…と思ってるとカカシ先生がお手本を見せてくれた。
松葉杖ついてるのに大丈夫なのかな…。僕の心配を余所に印を結び杖をついたまま木の表面を垂直にスタスタ登ってく。まるでそこが地面の様に簡単に。
「チャクラは上手く使えばこんな事も出来る」
凄い。登ってみたいな木に。これなら簡単に木に登れるし今より安心して寝れるに違いない。
「この修業の目的はまず第一にチャクラの調節を身につける事だ」
練り上げたチャクラを必要な分だけ必要な箇所に…これが案外熟練の忍者でも難しいらしい。更に足の裏はチャクラを集めるのに最も困難部位とされている。調節を極めればどんな術も体得可能になる。理論上は。
「第二の目的は集めたチャクラを維持する"持続力"を身につける事だ」
様々な術に応じてバランス良く調節されたチャクラをそのまま維持する事は最も難しい。
だからこそ木に登りながらチャクラのノウハウを修得する修業をする、と。
「体で直接覚えてもらうしかないんだけど」
クナイを四本取り出し僕達の足下に投げ地面に突き刺さる。このクナイで登った所に目印として傷を打ち、その印より更に上に印を刻むよう心掛けろ、と。
「ンな修業俺にとっちゃ朝メシ前だってばよ!」
どこからそんな自信出るんだろう。あ、カカシ先生に一番伸びてるって言われたからか。
それぞれ印を結び足の裏にチャクラを集める。走りたくないから木の幹に向かって歩く。足が離れる事もなく上手く吸着し意外に出来た。
『なんだ、簡単…』
「いってェー!!」
勢い良く木に走り出したナルトはチャクラが弱く見事に転んだ。痛そう…思いきり頭打ってたし…。サスケは逆にチャクラが強すぎた為足が木にのめり込んだ。サスケにも出来ない事ってあるんだ…。
「案外簡単ね!」
サクラちゃんはもう随分高い所まで登りクナイを刺し枝に座ってる。
「チャクラのコントロールがうまいのは女の子のサクラとソラみたいだな…」
僕は適当に木に傷を付け地面へ降りた。
あれからカカシ先生にナルトとサスケは煽られ躍起になって木に登り続けた。なので僕とサクラちゃんより幾分も傷だらけ。
『はぁ…疲れた…』
あと何回やればいいんだろ。チャクラを一定のまま維持するのは難しくかなり体力を使った。チャクラだって永遠に出るわけじゃないし…息切れが凄い。
地面に両腕を広げ大の字になり寝転んだ。綺麗な空を仰げるかなぁと思ったら葉が邪魔で見えなかった。それに陽射しが強い今は木漏れ日が痛く感じる。
「いってェー!」
本日何回目かのナルトの声が聞こえる。それにたんこぶが沢山増えてる…。木を見ると同じとこに傷が沢山あった。どうやら初めの頃とあまり進歩してないみたい。
あ、ナルトがサクラちゃんに何か訊きに行った。話し声が途切れ途切れ聞こえる。内容は聞き取れない。って何盗み聞きしようとしてんだ自分…。
「ソラ」
『んー?』
木漏れ日が眩しく目を瞑ってたら僕の顔に一つ影が落ちた。
「少しいいか?」
目を開けるとサスケが僕の顔を覗いていた。
寝ていた体を上半身だけ起こし向かい合う。
『どうしたの?』
「その…木登りのコツとかあれば教えてほしいんだ」
『コツか、』
そんな事訊かれるとは思いもしなかったので僕を頼ってくれたんだと思わず嬉しくて顔が綻んだ。
「何笑ってんだよ」
『え、笑ってないよ』
顔に出てたかな…気をつけなくちゃ。コツって言っても僕じゃあまり偉そうな事言えないしなんだろ…。
『コツはね…』
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