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愛は僕等を救わない
05



「さてと…お話はこれぐらいにしとこーぜ。俺はそこのじじいをさっさと殺んなくちゃならねェ」

お話って、勝手にお前が喋ったんじゃ…口には出さないが。

「つっても…カカシ!お前を倒さなきゃならねェーようだがな」

木に深く刺さった刀を容易く抜き瞬時に取り湖の上に現れたと思ったら印を結び、消えた。
気のせいか段々霧も濃くなる。

「まずは俺を消しに来るだろうが…桃地再不斬、霧隠れの暗部で無音殺人術の達人として知られた男だ。お前達も気をぬくな!」

タズナさんの周りを僕、ナルト、サスケ君、サクラちゃんが囲みその前をカカシ先生が立ちはだかる。

「さて…どの急所がいい?」

敵の姿は見えないが不気味な声が聞こえた。
途端に鋭い殺気が身体全体から感じられ気が狂いそうになる。クナイを握る手が震える。
それを知ってかカカシ先生は言った。

「お前達は俺が死んでも守ってやる。俺の仲間は絶対殺させやしなーいよ!」

その言葉にホッと安堵した。

が、突然背中を押され振り向くとそこには再不斬と向き合うカカシ先生の姿が。再不斬が斬りかかるがカカシ先生は水分身で躱す。
凄い…僕らが入る隙もない。

だがカカシ先生が蹴飛ばされ湖に落ちた。それにより水牢の術にかかり水の中に閉じ込められてしまった。

「ククク…ハマったな。脱出不可能の特製牢獄だ!」

どうする…カカシ先生が捕まった今、形成を立て直すしかない。

「偉そーに額当てまでして忍者気どりか…」

水分身でもう一人の再不斬が現れる。

「だがな、本当の"忍者"ってのはいくつもの死線を越えた者の事をいうんだよ」

『(消えた?)』

目にも止まらぬ速さでナルトがたった一撃で蹴飛ばされた。落ちた額当てを再不斬が踏みつける。

「お前らァ!!タズナさんを連れて早く逃げるんだ!水分身も本体からある程度離れれば使えない筈だ!!とにかく今は逃げろ!」

逃げたい、今すぐここから逃げ去りたい――

弱気な僕はついそんな事を考えてしまう。でも逃げてばかりじゃ駄目だ。そんなの…無理に決まってる。

「うおおおお!!!」

ナルトがおもむろに立ち上がり何をするのかと思えば急に走り出した。また軽くあしらわれ蹴飛ばされたがその手には先程踏みつけられた額当てが握られていた。

「おい…そこのマユ無し。…お前の手配書に新しく載せとけ!いずれ木ノ葉隠れの火影になる男、木ノ葉流忍者!うずまきナルトってな!!」

額当てをギュッと頭に結ぶ。

「サスケ、ソラ!ちょっと耳貸せ」

ナルトにしては珍しい自分から作戦があると言った。

「あのお前がチームワークかよ…」

『…珍しい』

「さーて、暴れるぜぇ…」

口元から流れた血を手の甲で拭った。
心配したカカシ先生が言う。

「俺達の任務はタズナさんを守る事だ!それを忘れたのか?」

「なぁに……もとはといえばワシが撒いた種。すまなかったなお前ら……思う存分に闘ってくれ」

「……という訳だ」

「覚悟はいいな…」

おかしそうに再不斬は笑った。

「いつまでも忍者ゴッコかよ。俺ぁよ…お前らくらいの歳の頃にゃもうこの手を血で紅く染めてんだよ…」

『………』



紅い手…あの悪夢を思い出す。
そうだ、夢の中の僕も血まみれで…人を、殺した。


違う。あれは唯の夢だ、現実じゃない。



「鬼人…再不斬!」

「少しは訊いた事があるようだな」

カカシ先生は知ってるようだが僕達は初めて訊く。

「その昔"血霧の里"と呼ばれた霧隠れの里には忍者になる為の最大な難関があった」


――生徒同士の殺し合い

「同じ釜の飯を食った仲間同士が二人一組になりやり合う。どちらかの命が尽きるまで……」

なんて残酷な…そして非道。

そして数年前、霧隠れの卒業試験が大変革を遂げざるをえなくなる。
その前年、その変革のきっかけとなる悪鬼が現れたからだ。
悪鬼とはまだ忍者の資格も得ていない幼い少年が百人を超えるその年の受験者を食らい尽くしたからだ。

それが今、目の前にいる再不斬。








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