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「はよー」


練習の準備をしてると
部室に次々とR陣が来た

作業してる私に気づきがっくんが近づいてくる


「お前は…本当のみょうじか?」

「あ…」

「こら 岳人失礼やろ」

「ご ごめんなさい…まだ…」

「せやな…一日では戻らへんよな」


優しく微笑む侑士の顔はやっぱりどこか寂しげで
罪悪感が襲う

取りあえず笑って準備を進めるけど


やっぱり 私がここにいるって迷惑だよね

みんながここのみょうじなまえを大切に思ってる事はわかる



それでも
もう少しだけ この世界に浸ってもいいですか


私 頑張るから
みんなの足を引っ張るような事のないように役に立ってみせるから




朝練が終わり
私もなんとか自分の仕事を終えて着替え
スクバを持ち 一つだけ転がってたテニスボールを片す為に倉庫前に行くと


そこには まだ着替えてないマネージャーがボールの入ったカゴが何個も重ねて置いてあるのを片づけていた



そっか
他のマネージャーは正レギュラーより人数いるから私より仕事がある

跡部は気を使ってか 他のマネの仕事は手伝わずに正レギュラーのマネ業に専念すればいいと言ってくれたけど


だからって 後から入ったのに
いきなり正レギュラー専用マネをしてるなんていい気分じゃないよね


「あ あの私がボール片付けます」

「えっみょうじさん?」

「いいよ 貴女の仕事は終わったんでしょ?」

「でも まだ着替えも出来てないしボールくらい片しますよ」

「…でも」

「いいじゃん そうやって言ってくれてるんだし後このボール片せば終わるんだから任しちゃおうよ」

「じゃあ お願いしていい?」

「任せてください」


更衣室に向かって行ったのを見届け
早速カゴを持ち倉庫に運ぶ

硬式のボールが沢山入ったカゴは想像以上に重くて思わずよろけてしまいそうになるけど



あと 一つ残ったカゴは
沢山 物の入った倉庫の一番上の棚に置くしかなさそう

なんとか自分の胸と同じくらいの位置にある棚に置こうと持ち上げてみるも
手は震えてなかなか置けそうにない


「…何やってんだ」

「ひゃっ」


背後から聞こえた声に変な声を出してしまい
更に腕の力が緩みカゴが傾きかけた

ボールが落ちちゃうと思うよりも先にカゴは私がさっき持ち上げた位置よりも上に持ち上がり棚に置かれた


「ほんとお前は危なっかしいな」


真上から聞こえる声
日吉がカゴを持ち上げてくれたんだ

近すぎる距離に心臓が激しく動く


「あっありがと」

「なんでお前がボールなんてしまってんだ?そんな仕事なかったろ」

「えっと…ボールの仕舞い忘れがあったから…」


代わりにやったとは言えず取りあえずごまかして笑うと

日吉は顔を背けて倉庫から出て行ったので私も倉庫を出て鍵を閉めた


「さっさと行くぞ 教室わからないだろ」

「う うん」


日吉は倉庫の近くに置いてた私のスクバを拾い上げ私に渡すと日吉の動きが一瞬止まった


「…お前 ネクタイは?」

「あっ えっと…結び方がわからなくて」


スクバから折りたたんであるネクタイを取り出して見せる

私の元いた中学ではリボンだったし
男子はネクタイでもすでに形が出来てるお手軽なホックタイプの物で


朝 鏡の前でいくら格闘しても結べなかったので仕方なく諦めた


「…ほら」

「え?」

「襟 立てろよ」


持っていたネクタイを日吉が奪い 訳がわからないまま襟を立てるとネクタイをかけられた

そのまま慣れた手つきでネクタイを結んでいく


身長差があるから
若干屈んでいる日吉の顔が近すぎて 平面上の絵よりも断然整った立体の綺麗な顔立ちが目の前にある

さっきのドキドキも収まってないのに
こんな至近距離に心臓はこれ以上ないほど動く


「ネクタイくらい結べるようになれ」


日吉によって綺麗に結ばれたネクタイの端を私の顔面に当て
笑いながら歩き出す日吉の後を必死に追った

こんなに心臓が煩いから
顔だってきっと茹で蛸状態だ

教室に着くまでには収まってますように…





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あきゅろす。
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