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あの後日吉に家まで送るって言われたけど
申し訳ないから一人で家に帰ったけど

また 眠れず
目覚まし時計が6時になるのを待った


これ以上迷惑をかけない
そう何度も自分に言い聞かせながら



ネクタイだけは
どうしても結べなくて
また 鞄に押し込めた



昨日の日吉より早めの時間に着いたけど
部室の鍵は開いてなくて

このまま部室の前で経ってても時間を無駄にしてしまうから
テニスコートに行き 落ちてる小石を拾った


一応コート整備はされてても
なるべく 使いやすくなればいいなと思いながら
しゃがみ込んでよく見るとなんだかんだ小石は落ちてて拾っていく



「…何やってんだ?」

「宍戸…?」


背後からの声に振り返ると
そこにはジャージを着てる宍戸がいて 私は拾った小石を見せた


「あー 小石なそんな事マネがやんなくてもいいだろ」

「早く来ちゃって時間もったいなかったし みんなが怪我したら嫌だし」

「そっか サンキューな」


にっこり笑った宍戸はしゃがみ込んで一緒に小石を拾ってくれた
宍戸だって今は正レギュラーなのに

とりあえず 一通り拾った小石は草の方に投げて部室に向かい作業を始めた

日吉の姿は見あたらなかったけど
コートから日吉の名前を呼ぶ声が聞こえるから来てるんだ


早く作業を始めた分だけ
他のマネの仕事も進めていく



もうそろそろ涼しくなってもいい時期なのに
残暑が続くせいで朝から太陽が照りつけてくる

汗を何度も拭きながらテニスコートと部室を走り回った




今日はマネの子が休んでた分他の子達の作業が遅れていたから
私の仕事は終わらせた後も残り日吉には先に行っていいからと言って片付けをした

チャイムが鳴る前になんとか間に合いそうだと思いながら廊下を走ると


一瞬視界がチカチカしてふらつく

今のはなんだろ
そう思いながら目をこすると
人が少なくなってる廊下を日吉が前から歩いていて私を見るなり溜め息をついた


「…お前 ネクタイ」

「あ…」


時間もなかったしですっかり忘れてたネクタイ
白いブラウスに赤いネクタイは栄えるからつけてないだけで目立つ

めんどくさそうな顔をして右手を私の前に突き出す日吉に何故か勝手に私の手はスクバを漁ってネクタイを渡した


手早く結ばれたネクタイを見てまた嬉しい気持ちになるのに
ぐちゃぐちゃの感情が邪魔する






4時間目の授業は体育のバスケで
体育の大きな扉を全開にしてるのに入ってくる風は僅かで

体育には熱気が籠もってた


その中で
私は体操着の上にジャージを着込んでいる

白い体操着の中で目立つ格好だから疑問にもたれたけどわらってごまかした



男女半分に体育を使って私のチームの試合が始まり
コートを走り回るけど ボールは取れそうにない

いつもより上がる息
激しく動く心臓


少し足を止めてると目の前をドリブルする相手チームの子が過ぎて
慌てて追いかけようと走り出すと



視界はぐにゃりと歪み
四角い壁が形状を変える

それでも走り続けようと踏み出すと 途端に私の視界はぐるりと変わった


「倒れたよー!!」

「誰?あれー」

「おい 女子倒れてる奴いるぞー!」


周りから聞こえてくる声も耳で音を調節出来ず歪んで聞こえる

冷たい床の感触が頬にも感じて私倒れてるのかと理解したけど
試合中にコートにいるのは邪魔だと まだ僅かに残ってる意識の中で体を起こそうと腕をついても震えて体重を支えられない


「みょうじ!!」


さっきまで 誰の声も脳内に響かなかったのに
その声は僅かな意識をはっきりさせる


震える腕で何とか上半身だけでも起こそうとすると
その腕の間に何かが入り
怠い体が宙に浮いた


「…ひ よ…」

「なにやってんだ!」

「だ……じょ…」


あぁ ダメだ
早く降ろしてもらわないと
一人で何とかしないと

歪む視界の中で日吉の切羽詰まってる顔が見えた気がした




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あきゅろす。
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