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時間を見ると
まだ 24時を少し過ぎたところだった


少しカーテンをあげると
満月で 真っ暗な空を明るく照らしてる



その満月につられるように外に出た


自然と足は
日吉の家の方に進むけど

こんな時間に日吉が起きてる訳ないのに
会える訳ないのに



家の近くまで来たはいいけど
やっぱり 日吉の姿は見えない

諦めて近くの公園のベンチに座った


静かな公園は
家に居るとき同じでどんどん暗い気持ちにしていく

ふと 近くからボールのインパクト音が聞こえた
こんな時間に誰だろ


その音の方に行くと
会いたかった日吉がいた

壁に向かって古武術のフォームをしてボールを打つ日吉は
なんか幻想的で
ボールはコンクリートの一カ所に集中的に当てられていてそこだけ少し色がちがくなっていた


フォームを変えた日吉の視線が変わり私の姿を見てボールを打つのを止めラケッティングをしそのボールを手に持った


「…みょうじ?」

「あ…えっと…」


目の前に知り合いがいるかる話しかけてくるのは当たり前なのに
さっきの日吉の姿に魅せられてたせいか言葉が出ない


「また散歩か?」

「う うん」

「こんな時間に出歩くな危ないだろ」

「…日吉はこんな時間まで練習?」

「どうしてもフォームに納得がいかなくてな」


日吉はそう言いながら近くのベンチに座り こっちに顔を向けてきたので私も隣に座った


「やっぱり すごいなぁ日吉は…ううん テニス部の皆そうだね 何か一つに一生懸命打ち込めるなんて私には出来なかった」

「出来なかったってなんだよ これから見つければいいだろ」

「…見つけられるかな こんな私に」


つらつらと喋ってしまいそうになる
あの暗い感情を思いを

せっかく会えた日吉にそんなの見せなくなかったから私は口角をあげた


「日吉はテニス好きだね」

「好き…というより負けたくない 結局俺達は全国大会に負けた 表彰台に乗ることさえ出来ずに…」

「……」


あの時の日吉はどう感じたんだろ
漫画の中で
アニメの中で
汗を滝のように流し 少しも諦めずに挑んでいたのに


「だからこそ来年は表彰台に その頂点に登る…青学の奴らが勝利に胡座をかいてる間悔いるくらいならその分練習を積み重ねて勝てばいい」


日吉の真っ直ぐな言葉が 目が 離せなくなる

どう足掻いても物語りの主役になれないのを知らずに努力し続ける日吉達

ねぇ その世界はどんな風に映ってるの?


「…なんで泣いてるんだよ」

「…え?」


日吉の言葉に頬を触ってみると濡れていた

急いで涙を拭っても拭っても涙は溢れてくる


「あれ?なんでだろ…ごめん…なんでもっない…の…っ」


日吉は持ってきてたタオルを私に突き出しそれを受け取り涙を拭くけど
やっぱり 涙は止まってくれない


「…みょうじにはサバイバル合宿で助けてもらったのにな」


タオルで顔を隠してる私には今の日吉の表情はわからない
日吉のいうみょうじは私だけど
私は画面越しに決められた台詞を選んでいただけだ

そこに私の意志などない


「…違うの 私は…もっと近くで日吉の事を見てたかった、大きな声で応援したかったっ…」


声が枯れる程の声援を間近で送ったところで
変わらない事実
だけど 少しでも近くで日吉の激闘を見て一緒に感じたかったの



「何言ってんだ 来年お前は氷帝のベンチコートから俺達の応援をしてくれるんだろ?」

「! そう…だね」


その時
きっと私はいない




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あきゅろす。
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