[携帯モード] [URL送信]
.




切原赤也の場合







私からフった元カレの家に行くのは可笑しい気がする

けど
私と別れた後 彼は壊れてしまったらしい


それを知ったのはつい最近で
でも なんでわざわざ別れた元カノの私にその話が回ってきたのかと言うと

一応幼馴染みだったって事とここ1ヶ月交流を一切断っていてみんな心配だからということだった


「…ここ、か」


教えてもらった住所に行くとなんとも古びたアパートだった


「最近強盗が多いんですって」

「いやーねー 怖いわ」


主婦の井戸端会の隣を通り過ぎて彼の住んでる二階へと階段を上った


ピーンポーン

「赤也ー?…あれ?応答ない いないのかなぁ」


インターフォンを押しても出てくる気配はない

…そういえば
赤也の家は鉢植えの下とかに予備の鍵が置いてあったな
忘れっぽい赤也ならきっと置いてある筈…

玄関の脇にある鉢植えの下を探すと案の定鍵があったので
その鍵で玄関のドアを開けた


「…なーんだ やっぱりいるんじゃん」


玄関を入ってダイニングの奥の磨りガラスの引き戸には人影が見えた

部屋に上がって磨りガラスの引き戸に近づくと赤也も私に気づいたのか立ち上がった


「赤也 私だよなまえ!」


名前言いながら引き戸を開けようと力を込めると赤也は反対側から開けさせまいと力を込められた


「あっ ちょっと…!開けさせてよ!!」


更に力を込めるけど赤也の力には勝てずに引き戸は開かなかった


「…いきなり来て赤也と正面を見て話せるとは思ってなかったよ…けどさそんなに拒絶しなくてもいいじゃん」


「だって…あの時は赤也が悪かったんだから!幼馴染みのままならいろんな女の子と遊んでても何も言う権利はないから…寂しくても言わなかったでしょ…」


「…けど 赤也、私を選んでくれたと思ったのに変わらず他の女の子と遊ぶなんて…私嫌だって何回も言ったのに…」


「……ごめんね、こんな不満を言いに来た訳じゃないの…」


ふと 部屋を見渡すと
男の一人暮らしを物語るように部屋は汚れていた

けど
棚にある写真だけは綺麗に飾ってあって
その写真は幼い頃の私と赤也が笑っていた


「聞いたよ…私と別れた後 後悔して悩んでくれたって…丸井先輩が教えてくれたの…」


「ねぇ 本当…?私、本当は別れたくなかった!!ずっと隣に居た赤也から離れたくなかった…」


「…今からやり直せないか、な…?恋人には戻れなくても幼馴染みに…ねぇ 開けていい?」


私が話してる最中
赤也は磨りガラスの向こうでうろうろしていた


私の話が終わると赤也の動きも止まった

開けていいって事だよね?ねぇ赤也…


ゆっくりと引き戸を開けた



「うおおぉおおぉぉお!!!!」


赤也は大声を発しながらラケットを私に振りかざしてるのが見えた

その瞬間頭には鈍い痛み
私は後ろに倒れ込んだ


「わぁああああぁあ!!!!」


「この野郎!!このっ!このぉお!!」


赤也は倒れたなまえに馬乗りになりそのままラケットを振るい続けた


「…っはあ はぁ…こんにゃろ…」


ひとしきり殴って
やっと殴り終わった相手の顔を見た


「………なまえ?」


やっと赤也はなまえが居た事に気づいた

目を見開いたまま頭から血を流してるなまえの頬を叩いた


「なまえ?なまえ!!…なんで…いるん、だ?なまえ!なまえーーっ!!」




赤也はなまえと別れてから
自暴自棄になっていて体の異変が病気だと気づかずそのまま放置した結果病気が悪化し

1ヶ月前に
耳が聞こえなくなり補聴器がないと聞こえない後遺症が残った


赤也は昔馴染みの誰にも知らせてなかった



『最近強盗が多いんですって』

『いやーねー 怖いわ』













あきゅろす。
無料HPエムペ!