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一氏ユウジの場合






「ひーかる!!来ちゃった!!」

「来ちゃったってなんやねん いつもよう来るな」

「ぜんざい買ってきたから食べよ?」

「…はぁ はよ入れや」


買い物を終えてマンションに戻って来ると
本当にたまたま隣の部屋に住み始めた財前と彼女のみょうじが居った


「あっ ユウくん!」

「…おう」


にっこり笑って手を振りながらみょうじは財前の部屋へと消えて行く
…もう うんざりや

部屋に入ってコンビニの袋を漁ってると電話が鳴った


『締め切り明日ですけど大丈夫ですか?』

「…俺 締め切り破った事ないですやん」

『そうなんですけど 明日引っ越しと重なってるって聞いたんで…』

「わかっとるわ!」


電話を切って デザインの最後の仕上げを進めた
ホンマ腹立つやつらばっかや

せやけど
明日になれば ここからはおさらばや…


仕事も少しははかどりやすなるやろ





ーーーーー…


ピーンポーン

「こんにちは!バイク便ですっ」


玄関先から聞こえる声
夜中遅うまでやってた頭に響いてうるざったい

封筒に入れたデザイン案を持って 無駄に爽やかな兄ちゃんに渡した


「えっと住所が…あ、ぁ おお預かりしましたっ」


早よう休みたかった俺は住所確認なんか聞かんとドアを閉めてソファーに寝転んだ


「ねむ…まだ引っ越し屋くるまでだいぶ時間あるし…とりあえず ねよ…」










ドンドンドン
『ひかる!あけてぇ』


ドアを叩く音で目を覚ました
この声は…みょうじやん…


「…なんやねん ちゃうよー」


ドンドンドン
『ひかるあけて!!ひかるあけてよぉひかるぅ』


俺の声は届かんかったみたいでその後も何度もドアを叩く音と財前の名前を呼ぶみょうじ


「ちゃうて 隣やぞー ここじゃないでー…」


ドンドンドン
『ねぇあけてぇ!あけてよぉ…ひかる!ひかるあけてあけてひかる!』


なんやねん…俺は財前ちゃう…
財前やない 俺やのぅて財前選んだの自分やろ…


「うっさいっちゅーねんっ!!」


俺が怒鳴るとドアを叩く音も財前を呼ぶ声も聞こえなくなった

俺はそのまままた眠りについた






ドンドンドン
『一氏さん?』

ドンドンドン
『いらっしゃいませんか?』


「…ぅ…ん…」


ドンドンドン
『一氏さん?一氏さん!』


なんやねん…今度は男の声や…
みんなして 俺の睡眠邪魔にすんなや…


ドンドンドン
『警察の者なんですけど』

「…警察…?」


わざわざウチになんの用やねん
怠い体を起こして玄関のドアを少し開けると制服を着た警官が居った


「…おやすみ中でしたか?」

「まぁ…」

「一氏ユウジさん…ですよね?」

「そうですけど」

「確認してもらいたい事があるんです」


警官がそう言うとドアを全開にした
ドアを全開にして確認してもらいたいってなんやねん…


「…っ!?」


玄関先の廊下を見ると凄まじい量の血だまりがあった


「…この先で女性が事故があったんですけど 気が動転したのか現場から逃げ出してしまって…運転手も探し回ったみたいなんですけど…」

「………」

「住人がここで丸くなってる所を発見した時にはもう遅くて…」

「そいつホンマにっ!!なまえなん!?嘘やろ!!!なまえの訳があらへん!!!」


隣から勢いよく出で来た財前の顔は
今まで見たことないくらい焦ってて


「…嘘や…嘘やぁああぁあ!!!!!」


廊下の血の量を見て
普通に生きてる訳がないとわかった財前は

今まで聞いた事ないくらいの大声を出して居った


今の財前に何も言葉をかけてやれへん俺は
そっと部屋に戻った…



end


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