「あ」
「あ…」
声が重なった。
それは自然公園のベンチに座り楽しそうに翔る子どもたちを見ながら自分はなんて汚れた人間になってしまったんだと考えていたときのこと。目の前に現れたのは例のごとく例の少年。
「ロケット団、解散したんだって?」
「…お陰様で…」
皮肉を込めて言った。しかし少年は私の隣に腰かけた。
「今はなにしてんの?」
「あなたには関係ないでしょう」
この少年に全てを奪われたんだ。教える必要は全く無い。
「まあ、もしまた悪さしたら僕が止めるけど」
本当に癇に障る少年だ。さっさとどこかへ行ってしまえば良いのに。
「……ごめん」
「え?」
耳を疑う言葉が少年の口から出た。驚いて視線を向ければ俯く姿。
「…何故あなたが謝るんです?」
ロケット団としての活動が悪いことだと自覚しながらもサカキさまのために悪に手を染めたのは私だ。謝られる要素はないはず。
「…この前ロケット団の残党に会ったんだ。そのとき、そのロケット団に『お前は俺たちの居場所を奪った』って言われてさ……考え無しに行動しちゃったかも、って…」
「それは…」
確かにそうかもしれないけれど。
「良いですか。あの子どもたちを見て下さい」
「…え?」
それはそれは楽しそうに駆け回る子どもたち。
「あなたがロケット団を解散させなかったら、あの子たちの笑顔は無かったんです」
まさか自分がこの少年を慰めようとしているなんて。
「未来あるたくさんの子どもたちを、あなたは守ったんです。私たちはみんな一人でなんとかやっていけます。だからあなたに謝られる必要は全くありません」
「…ランス…」
「では私はもう行きます。さようなら」
かつての敵とはいえ、慰めたなんてなんだか居心地が悪い。
「ランス!」
「…なんですか?」
「次会ったら、ポケモンバトルをしよう!」
その誘いに返事はせず、代わりに少し笑ってその場をあとにした。
それぞれの想いのせて
100327
title:ひよこ屋さま