卒業式の後、教室に戻ってそこで送別会のようなことが行われた。クラスのみんながお祝いムードの中、シュウは一人欠けていることに気づいた。
(…ハルカ…?)
クラスの一人に断ってハルカを探しに出た。と言っても学校の中だが。
そしてベタな展開だが、彼女は屋上で座り込んでいた。
「ハルカ、」
「!シュウ…?」
シュウを見たハルカの目は赤く腫れていた。
「泣いていたのかい?」
「……だって……」
柔らかな風がそよいだ。
「もう卒業なんて…早すぎかも…」
確かにこの3年間は早かった。1日が長いと感じるときがあっても、全体を通すとやはりあっという間だ。
「みんなと離れるなんて…嫌…」
シュウはただ黙ってハルカを見つめている。シュウだって寂しいのだ。だけどそれを一言でも口に出せば自分も涙が出ると分かって決してその言葉を発しなかった。
「これで最後なわけじゃないだろう?」
「分かってる…でも…」
「同窓会の計画だって、結構前から出ていたし、すぐにまたあのクラスで集まれるさ」
「…うん…」
ハルカは袖で目をごしごしとこすった。
「美しくないね」
そう言ったシュウの手にはハンカチ。ハルカはお礼を言いそれを受け取り目に持っていく。
「…っおかしい、かも…このハンカチ、…涙拭けない…」
ハンカチが悪いわけではない。ハルカの涙がとめどなく溢れているのだ。拭っても拭っても零れる。
そんなハルカを見てシュウは唇をかんだ。もらい泣きなどしたくなかった。ハルカに涙を見せたくなかったのだ。
「…シュウ、ごめんね…」
「どうして君が謝るんだい?」
「ハンカチ…グシャグシャかも…」
「良いんだ、あげるよ」
そう言うとハルカは首をふるふると横に振った。相変わらずハンカチは目元にある。
「ハルカ、教室には戻らないのか?」
いくらまた会えるとはいえ制服を着て、みんなでわいわいするのは今日が最後。
「戻るけど…もうちょっとだけ…」
その言葉を聞き、シュウはハルカの横に腰をおろした。
「シュウ…?」
「それじゃあ僕ももう少しここにいようかな」
今日は天気も良いことだし、と続けながら微笑んだ。
そして2人で空を見上げる。
「色んなことがあって…すごく楽しかったなぁ…」
「そうだね。特に君なんて行事の度に張り切ってたし」
「ほんとに楽しかった…」
その時。屋上のドアが開き、大勢の生徒が入ってきた。その生徒たちは皆、2人のクラスメートだった。
「2人ともなかなか戻って来ないから、ここでクラス会やろうと思ってさ」
サトシがニカッと笑った。
「でもどうしてここだって…?」
「今日は天気が良いからな!」
あまり答えになっていないが、そんなこと2人には関係なかった。さっきまで静かだった空間が、急ににぎやかになり、ハルカの涙も止まっていた。
みんなが笑顔になった。
旅立ちの日に
(ありがとう、また会う日まで)
100301
:< 卒業ですね