「バレンタインに男女で行って特盛りを完食できたら無料プラス非売品のものがもらえるらしいの!だからお願い、一緒に行かない?」
偶然出会っていきなりの彼女の言葉に僕はなにも返せなかった。なんて食い意地のはった、美しくない発言。特盛りだって?
それ以前に、バレンタインに男女なんて、つまりカップルじゃないか。ハルカは一体何を考えているんだ?…いや、何も考えていないか…。彼女は鈍感だ。
「…仕方ないか、」
「やった!ありがとう!嬉しいかも!」
惚れた弱み、というやつか。僕は随分彼女に甘くなった。
そして…。
相変わらずの彼女の食いっぷりには呆れを通り越して感心してしまう。
「おじさーん!ごちそうさまでしたー!」
そして見事、懸賞を獲得した。
ハルカが喜んでいるなか、僕は隣のテーブルにいた人に話しかけられた。
「兄ちゃんたち、付き合ってんだろ?」
「…付き合っ…?!」
付き合ってなんかいない。一方的に想っているだけだ。それなのに。
「お祝いのキス、しないのか?」
「き、キス?!」
確かに今日、男女で過ごすということはカップルの可能性のが高い。だけど必ずしもカップルとは限らないだろうに。
しかし周りからはだんだんコールが大きくなり…
「え、な、何?きき、キス?!」
ハルカの耳にも届いてしまった。
店を出た僕ら二人は恐らくどちらも顔が赤いに違いない。仕方ない、あの雰囲気の中しないでいたら気まずい、と思ってはいるものの…。
「…ごめん、ハルカ…」
「な、何が…」
「その…キス、のこと…」
「わた、私は、嬉しかった……かも…」
彼女の言葉に耳を疑った。
「嬉しかった…?」
「私、シュウのことが好き、なのかも…」
心臓の音がうるさいくらい鳴っている。
なにを今さら
そんなこと
(僕らはとっくに相思相愛だったんだ)
1002210
title:ひよこ屋さま
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