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期待をしてないなんて言えば嘘になるけど、同じように旅をしている彼に会える確率なんてすごく低いに決まってる。そう思っても、やっぱり目では思わず紫色を探してしまう自分につい苦笑い。

「ヒカリ、そんなにキョロキョロしてどうしたんだ?」
「え?!う、うん…えっと…大丈夫、なんでもないの!」

いるわけない。それにいたとして、どうしたら良いの?サトシたちと一緒だったらある物を渡すのはすごく恥ずかしいし…。

「あ、シンジ!」
「?!」

肩がびくりと震えた。シンジこそ、私が探していた対象。こんな日に、偶然があるなんて。つい期待しちゃう。

「…またお前たちか」
「またとはなんだよ!」

だけど、私とシンジが二人きりになれるチャンスなんてそうそう無い。と、思っていたら。今日は運が良いみたい。
バトルも何も無くシンジは先へ進む。それは私たちがついさっき通った道。

「あ、ねぇ二人とも!私落とし物しちゃったみたいだからちょっと探してくるね!」
「落とし物?オレも一緒に探そうか?」
「え、サトシも?!大丈夫よ!一人で!」
「そうかー?」
「サトシ、ヒカリが大丈夫って言うんだからおれたちはここで待ってよう」

タケシのおかげで一人で行くことができた。

「ちょっと待って…!」

シンジは歩くのが早いみたい。サトシたちから結構離れちゃった。

「…なんだ」

不機嫌そうな声で言いながらも足を止めてくれたことが本当に嬉しい。

「渡したいものがあるの」

そしてカバンから出したものを半ば押し付けるようにして渡した。それは手編みのマフラーと手作りのチョコレート。

「お前、…これは一体何の真似だ…」
「何の真似?!今日、女の子が男の子に贈り物するってことの意味が分からないの?!」
「今日…?」
「用は済んだから私戻るね、じゃあ!」
「おいっ…!」

制止の言葉も無視して走り去った。シンジはいつ私の気持ちに気づいてくれるだろう。





(兄貴、今日って何の日だ?)
(今日?バレンタインデーだけど…)
(バレンタイン?)
(シンジ、お前まさかバレンタイン知らない何てことはないだろ?)
(そんなこと分かってる…切るぞ!)
(あ、ちょっ…)


100210
title:ひよこ屋さま




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