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「…だいじょばない…」

周りは木、木、木。そんな中、一人ぽつんと佇む少女、ヒカリ。

「サトシたちとはぐれたと思ったらポッチャマとまではぐれちゃった…」

どうしよう…。
ヒカリの呟きは誰に届くこともなく吸い込まれるように森へ消えて行った。

「モンスターボールも全部置いてきちゃったし…」

そんなヒカリにさらに追い討ちをかけるように段々と辺りが暗くなっていく。元々木が生い茂って光が入りにくいのだ。少し日が沈めば瞬く間に夜のようになってしまう。

「あー、もう、どうしたら良いの…」

力無く、へなへなと座りこんだ。

「おい、お前」
「?!」

聞いたことのある声―それもサトシとタケシのどちらでもないもの―にヒカリは振り返った。そこにいたのはサトシのライバル、シンジ。

「邪魔だ、どけ」

相変わらず歯に衣着せぬ物言いに、普段のヒカリなら怒り出していただろうが、今の彼女にとっては例え相手が誰であろうと救世主のように思えたため、言い返さなかった。

「あ、あのー…」
「なんだ」
「…サトシたちとはぐれちゃって…この森の出口まで一緒に行っても良い?ポケモンたちもみんないなくて困ってるの…」
「…好きにしろ」

その言葉を肯定の意と解釈したヒカリは「ありがとう!」と言うと立ち上がりシンジの後を追った。
と、そのとき。ヒカリは石につまずき勢いよくこけた。盛大な音にさすがのシンジも足を止め振り返った。

「いったー…」
「…何してるんだ…」
「だいじょーぶ!…っ!」

足を挫いたようで、立ち上がるものの痛みでまたしゃがんだ。

「……ちっ」

舌打ちしたシンジの次の行動に、ヒカリは目を丸くした。ヒカリに向かって背を向けしゃがんだのだ。

「シ、シンジ…?!」
「良いから乗れ」
「…う、ん…」

意外な行動にドキドキしながら背に乗った。
そして歩くこと数分。

「…シンジ大丈夫?その…重くない?」
「…重い」
「何よそれーっ!女の子に重いって言うのは失礼よ!」
「お前が聞いてきたんだろ」
「だからって正直に答えるなんて信じられない!」
「暴れるな」

森は真っ暗だったが、二人の周りは明るかった。



(ヒカリーどこだー!)
(ほら、ヌルい奴らが騒いでるぞ、降りろ)
(あ、うん…あの、ありがとう!)
(…フン)


091221
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