@ あかにまみれた(キドロー) 単純に、綺麗だ、と思ってしまった。 ***あかにまみれた 静寂だ。 なぜなら、 今、俺の周りは薄気味悪い程に静かで、薄気味悪い程にたった二つの音しか、今は聞こえて来ないから。 ザシュッ ザシュッ 定期的に続く、刀がナニカを切る音と、 ヒトの断末魔の叫び声を聞きながら、 俺はゆっくりと、その音の主へと近付いて行った。 戦いの跡地は何時だって静かだ。 特に俺は、気が済むまで何もかも壊してしまうから、 その感覚に深く浸り、酔い痴れる。 何も無いと言う漠たる感覚に。 だが、今回の静けさの原因は、俺じゃない。 むしろ俺は、止める側。 「あのクルー達に泣いて頼まれたらなあ…」 そうぼやきつつ、音の主のあおいろの外科医に話しかけた。 「よう、満足したか?トラファルガー。」 「…あぁ…ユースタス屋か。 何でこんな所に居るんだ?」 「仕様がないだろう。お前ん所のクルーに、泣いて"キャプテンを止めてくれ"って言われたんだから。 だからさっさと止めろ。俺だって忙しいんだぜ。」 そう言うと、あおいろの外科医ートラファルガー・ローは、瞬間、ムッとした顔になったが、すぐにまた、少し、へらりと笑い(嫌な笑みだ。)、動作を実行した。 …端的に言うならば、 無視、した。 …ムカッ… 「て、テメェなあ……!! 一体何がしてぇ…!!」 「…まだ、なんだ。」 「…!! ……何が…だ?」 「お そ ろ い」 にまっと笑ったトラファルガーは、 返り血で、 なにもかもが 真っ赤 だった。 「だいぶ"あかく" なったとは思うんだけどな、 まだまだお前に 『おそろいだな。』 なんて言えねぇんだ。 なあ、ユースタス屋。 一体何が足りないだろう?」 美しい。 そう感じながらも、俺は、こう答えてみた。 「お前は一生、"あか"にはなれねえよ。だってお前は "あお" なんだから。」 「そ…か…。」 彼は、その笑みのままで、 刀を、 自分に、 かざした。 **あかにまみれたあお お前はあかにはなれねえよ。 お前はあおって決まってんだからな。 ったく…意地張るんじゃねーよ。 お前は、お前だ。 …ばーか。 [次へ#] [戻る] |