プロローグ 「ーーあれ?」 ここはどこだろう。 がやがやと人の声、雑踏、店に流れる音楽、車の走る音。 ここはどこなんだろう。 私は周りを見渡す。どうしてこんなに賑やかなんだろう。 私のいたところはもっと閑静かとしていたはずだ。 もう一度辺りを見渡すが、目に映るのは見覚えのない景色ばかりだった。 けれどもきっとここは日本で、とりあえず言葉が通じることに少し安堵した。そして、気づいてしまった。 こんな場所は、私は知らない。 だってさっきまで、家に帰ってる途中だったのだ。なのにいきなり、見知らぬ風景の中に放り込まれていたなんて、私は白昼夢でも見ているのだろうか。 目をごしごしとこすってみても、目の前のビル群や人ごみは消えてくれない。 相変わらず視線が定まらないまま、足を踏み出した。運動靴が固いアスファルトを踏みしめる。 「これは…夢?」 何てことだろう。 人々の喧騒は未だ騒がしいままだ。今更冷や汗が顎を伝う。 「まいったなあ…」 . |