不良くんと仲間達(泉+阿栄巣水)2 なんだかやけに楽しそうに話す田島から漸く解放されたのは学校が終わってから。 休み時間の度に頼んでもないのに、アベがどーだのサカエグチがどーだのスヤマが、ミズタニが……とかって…。 適当に聞き流していたから、頭に残ったのはあの4人組の名前くらい。 他はどっかすっ飛んでった。 (……ねみぃ…) 欠伸を噛み締めながらも、足は自然といつものあの病院へ。 別に、誰かに頼まれたとかそんなんじゃない。 そうしなきゃ、自分の気が納まらないだけ。 (…さて、今日も、痛い現実に打ちのめされに行こうか…) 重たい溜息を漏らしたそんな時、微かに耳に届いた物音と数人の声。 そんなものいつもみたいに気にしなきゃいいのに、今日ばかりは何故か気になってしまって、鈍い音のする方へ無意識のうちに足が向かっていた。 (…………うっわぁ…) そうして、ものの数秒で辿り着いたのは、滅多に人の来なそうな、かつては小さな工場があったらしい荒れ果てた資材置場のようなそんな場所。 あぁ…嫌なものを見つけてしまった。 そこにいたのは、学校で何度も見かけていたあの4人組。 その4人は、囲まれていた。 圧倒的に不利な人数相手に、それでもなんとか対抗できているという、なんとも悲惨なその状況。 相手は確か、ここいらを締めてる他校のグループだ。 (あぁあ……ありゃダメだな) きっと、早いうちにケリを付けなけりゃアイツ等が押されてしまうだろう。 全員が1人を構うことで手一杯になっている為、休む間もなく次から次へと相手が代わり攻撃をされてしまうと、なかなかそれに応戦できないでいる。 …もう1人、いれば…。 もう1人、先陣斬って突入し、相手を攪乱させつつ応戦したり援護したりと器用に素早く動けるヤツがいれば…。 そうすれば、もしかしたら…。 (…オレにはカンケーねぇし) 頭ではそう思う癖に、体はその場からピクリとも動こうとはしない。 視線すらも、尚も争っているアイツ等を追うばっかりで…。 『…オレはさ、泉がしたいことをしたらいーと思うんだ』 唐突に、脳裏に蘇ったのは、穏やかな声音。 それは、いつだったか…アイツを助けようとして、逆に助けられてボロボロに泣いた、いつかの想い出。 助けられなかったことが悔しくて。 助けられたことが悔しくて。 弱い自分が腹立たしくて、悲しくて、やっぱり悔しくて。 だけど、そんなオレにアイツはニカッと笑って『ありがとな』なんて言った。 『泉が怪我すんのは嫌だけど、オレは自分のしたいようにのびのびしてる泉がイイと思うよ』 どうせ止めたってムダだし? そう笑った、アイツ。 好きなようにしたらいいって、オレの道を示してくれて。 (………ワリィ……浜田) せっかく、オレがもう怪我をしないようにってしてくれたのに。 オレの代わりに、1人でお前が傷付いたのに。 だけどやっぱり、お前の時みたいに、目の前で起こっていることを見なかったことになんてできないから…。 「―――阿部!!後ろ!!」 誰かの叫び声で、いつの間にか駆け出していた。 その先では、鉄パイプを振り上げたヤツの目の前に、鳩尾を喰らったらしいアベが蹲っていて。 「この貸しはメロンパンでチャラにしてやんよ!」 とん…と、アベの肩に手を突いて、走ってきた勢いのまま相手のこめかみを狙って蹴りを入れる。 そうすれば、予想していなかったであろう相手は真面なガードもできずに蹴りを喰らい、その場に勢いよく倒れ込んだ。 そんな、誰もが唖然としている中で、オレだけは冷静に着地し、刹那駆け出す。 そうして近くにいた別のヤツ等目掛け、さっきのヤツが落とした鉄パイプを蹴り飛ばし、それが当たったことを確認しないうちにまた別のヤツ等の元へ。 我に返ったヤツ等はオレ目掛け殴り掛かってくるが、お生憎様、力だけのヤツはどうも動きが鈍いんで簡単に避けられてしまう。 オレは、相手が殴り掛かってきた勢いを逆に利用して、片っ端から敵を放り投げていく。 気付けば、さっきまで呻いていたアベも、その周りで呆けていたサカエグチもスヤマもミズタニも喧嘩を再開していた。 「テメェ、どこのどいつだ!」 不意に誰かが叫ぶ。 その声に反応して振り返ると、相手を殴り付けながら目付きの悪いアベがオレを睨んでいて。 それがなんだか気に入らなかった。 だから、オレは鼻で笑ってやった。 「いずみこーすけですけどなにか?」 すると、向こうでアベが八つ当たり宜しくガタイのいいヤツを蹴り飛ばしていた。 はっ。 わかりやすいヤツ。 暫くして、辺りが夜の静さに包まれ始めた頃、漸く全てが終わった。 あんなに威勢のよかったヤツ等は気付けば尻尾を巻いて何処かへ逃げていってしまっていた。 「ッあ゙ー……久しぶりに運動したあぁっ」 全身で息をするように、地面の上で寝転がったまま乱れてしまった呼吸を繰り返す。 辺りはいつの間にか薄暗い闇に包まれ肌寒い。 だけれど、何処か温かい胸。 重たかった頭は、今は何故だかスッキリとしていた。 「……ねぇ、イズミって…」 すると、こちらも乱れた呼吸を整えながらオレをチラチラと見遣っていた茶髪の短髪が、もしかして…と言いにくそうに口籠もる。 それに反応するように、坊主頭とへらっとしたヤツもこちらに興味を示してきた。 あの、目付きの悪いアベだけが無関心。というより機嫌が悪そうだ。 たぶん、助けられたことが気に喰わないんだろうな。 かわいくねーの。 「なんか、ちょっと前まで誰かとセットで『竜虎』とかって言われてたりしなかった…?」 「…………まぁ…」 「ぉお!」 「ぁ、オレもそれ聞いたことある!ちょーかっけぇ!!」 「ウソでぇ、ダッセーだろ…。実際、そんなんで呼ばれてみろよ。恥ずかしいっつの」 栄口と名乗ったヤツのあとに、水谷とかいうヤツが妙にはしゃぐ。 鬱陶しいな。 すると、坊主の頭の巣山ってヤツが傷の手当をしながら不思議そうな顔をした。 「ぇ、ナニお前、そんなに有名人なの?」 「知らねー」 「中学ン時はケッコー有名だったよ。高校生相手ともヤり合って勝ったとかって…」 「…あぁ……ありゃ、相手が自分でヘマしたんだよ」 たまたまだ。 そう言った時、阿部がぼそりと何かを言った。 聞こえてないと思ってんだろうが…えぇ、バッチリ聴こえましたとも。 「チビで悪かったな、ぁあ?テメェなんてすぐに追い越してやらぁ。つーか、そのチビに助けられたのはドコのドイツでしょうかねぇ〜?」 「……」 「簡単に鳩尾喰らってンじゃねぇっつの。急所だぞ急所。後ろ下がるなり体反らすなりして避けろよな」 「うるっせーな!テメェに助けてもらわなくたって余裕だったっつの!」 「へぇ〜?」 「…なんだよ」 「いーえ〜?べっつにぃ」 「…っのやろ…!」 握り拳を震わせ睨んでくる阿部を笑い飛ばし、オレは夜空を見上げる。 そこにはやけに綺麗に輝く星が散らばっていて、なんだか妙に嬉しかった。 (………ワリィ、浜田) 浜田の意志を無駄にしたことは確かに後ろめたい。 申し訳なくて、どの面下げて次にあの病室を訪れたらいいのかわからない。 浜田が目を覚ました時、なんて言ったらいいのかもわからない。 だけど、妙にスッキリしていて、なんだか軽くなれた気がして。 『泉がしたいことをしたらいいと思うんだよ』 喧嘩がしたいわけじゃない。 オレが仲間に付いたからって、コイツ等が怪我をしなくなるわけでも、周りから悪く言われなくなるわけでもない。 だけど、喧嘩してるコイツ等を放ってはおけない。 浜田の時みたいに、あることないこと好き勝手言われるのもなんとなく癪だ。 (…田島のダチだから、手ぇ貸してやるだけだけどな) なんて思うオレは久しぶりに、無意識のうちに笑みを漏らしていた。 「そーいや阿部。お前の所為で田島が『ゲンミツ』の使い方間違えて覚えちまったんだけど」 「知るかああ!!」 なぁ、オレは相変わらずバカしてるから、 お前にも紹介したいヤツ等がいるから、 早くまた一緒にバカしようぜ。 なぁ…浜田。 コイツ等が、 オレの新しい仲間だぜ。 (つーか、ちゃんとオレのことチェックしてんじゃん) (ホントだ〜。阿部のノートにびっしり書いてあるー) (おんなじとこに入ったの嬉しかったんだ…) (素直じゃねぇの) (……) (キモ) (るっせぇな!!!) (((……案外イイコンビ…?))) +-+-+-+-+-+-+-+-+-+ ……………うわ、なんか泉の動機が微妙すぎますね(^q^) すいません……途中からこんがらがった← でも、なんか気になって助けたくなる相手っていますよね。仲間として好き、とかで。 見て見ぬフリができなくて、なんとなく放っておけない。 口には絶対に出さないけど泉はそんな感じであのメンバーに加わってたらいいな、なんて←← ……浜田はそのうちちゃんと出したいです。 途中で、この設定はどうかなと思ったんですが(浜田出せないし)、でもこの設定がいいと思いまして………浜田ならやりそうだし。誰かを庇って…とか。 いつか、浜田とやんちゃしてる泉も書きたいぃぃ。 長々と失礼しました…((笑。 こんなに長くなるとは思わなかった!← 10,12,07 [*前へ][次へ#] |