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同じ朝を、同じ夜を
「遊馬、おはようとは何だ」
「挨拶だよ。デュエルするときにデュエル!っていうみたいに、朝会った人にそう言うの」

諦めた。もう。妥協しよう。
ひっきりなしに質問されて、付きまとわれて、一々気にしていたら死んじゃうんじゃないかというくらい、ストレスが溜まっていた。
自分一人の時間といえばトイレと風呂のみ。あとは四六時中一緒という、家族でさえそんなにずっと傍にいることはないであろう過酷なシチュエーション。
追い払う、とか。いなくなってもらう、っていう風に考えるのはやめよう。
こいつとうまく付き合っていくにはどうすればいいのか、それを考えることにした。
質問されたら大まかな説明だけでもする。そうじゃないと、同じことを何度も聞いてくるから。
一度無視すれば諦めたようなそぶりをするくせに、しばらく経ってからまた同じことを質問してくる。
結局説明しなければいけないのだ。

「では、おやすみとはなんだ」
「それは寝る前の挨拶」
「遊馬」

じっとこっちを見つめる金と銀の目は、この世のものではないみたいで、きっと本当にこの世のものじゃないんだろうなとぼんやり思った。

「おやすみ」

きっと明日の朝、目を覚ませば「おはよう」と言ってくるんだろう。
それがなぜか、嬉しくて。きっとアストラルが存在し続ける限り、おはようとおやすみが繰り返されるんだろうという事実がひたすらに胸を満たして。
本当はずっと寂しかったのかもしれない。
家族でさえ踏み込めないような自分の領域に、アストラルが無知という武器を手にずかずかと入り込んで来る。
諦めたわけでも、妥協したわけでもない。自分で自分の弱い部分に迎え入れようとしている。

「おやすみ」

今のところは、何があっても傍にいる。
そんな、都合の良いデュエリストの幽霊に親しみと信頼を感じている自分が情けなかった。


あきゅろす。
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