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いなくなって清々したと思っていたのに、またあいつが出てきたとき、なんか嬉しいような気がした。
あんまり考えたくないけど、なんか。
良かったって心の中で呟いちまったかもしれない。そんな気がする。気がするだけだけど。

「これは何だ」
「今度は何だよもう…」

こいつは質問ばっかしてきやがるし、お風呂だろうがトイレだろうが入って来ようとするし。とにかく面倒くさい。
今回幽霊が指さしてたのは、俺の父さんと母さんが笑っている写真だった。
自慢の父さんと母さんだ。

「写真」
「写真とは何だ」
「お前人にデュエルタク…何とかが悪いとか言っときながら少しは自分で考えたりしねえのかよ」
「考えている。常時観察し、思考している。少しでも記憶の手がかりになるものを収集するために」

記憶がないっていうのは、どんな感じなんだろう。
幽霊はみんな記憶がないのかもしれない。
でもそれじゃあ、幽霊はみんなナンバーズを集めるのか?それもおかしい。
わけわかんねえ。けど、多分きっとこいつもそれは同じなんだろうな。

「写真は…うーんと……えーっと…そうだ!」

確か父さんの形見の中に昔使われてたっていうカメラがあったはずだ。
こいつの為に探すのは癪に触るから、俺が何となく父さんの形見のカメラで写真を撮りたくなったってことにしよう。
気持ちの問題だ、うん。
幽霊の隣に立ってカメラを構える。

「はい、チーズ」
「チーズ?チーズとは確か乳製品の…」

パシャリ、という音がしてカメラから写真がゆっくりと出てきた。画質悪い…。しかも幽霊が写るわけがない。俺が一人で不機嫌そうな顔で写っている写真。
それをあいつに突き出してやれば、ようやく理解してくれたみたいだった。
写真を見ながら何度か小さく頷いている。

「とどのつまり、静止画としてその場その時の風景を切り出して見ることができるということか」
「委員長のそれ、気に入ったのな。まあ、そういうわけ。じゃあ俺もう寝るから」

電気を消してハンモックに横になった瞬間、またあいつが話しかけてきた。最悪だ。無視無視。

「遊馬」
「………」
「遊馬」
「……あぁもう何だよ!」
「あの写真に写っていた人物は誰だ」
「…俺の父さんと母さん」
「親とは子供と一緒に住むものではないのか」
「そうしたくたって、できない奴もいるんだよ」

また観察結果うんたらとか言い出したあいつは放っておいて、寝返りをうった。
泣きそうになった。俺。
父さん母さんのことはちゃんと割り切って一人で生きてるような気がしてたけど、そんなことない。有り得ない。
久しぶりに、寂しい。

「お前が来てから、変なことばっか起きて大変だけどさ、夜とか、前までは父さん母さんのこと考えて暗くなってたのに、お前が来てからあんまり寂しくないんだよな」
「私の存在が君をオーバーレイユニットのようにサポートしているというわけか」
「そんな感じ。でもお前、勝手にいなくなるし。いなくてよっしゃーって思ってたら出てくるし。わけわかんねえよ」
「ユニットを取り除くことで力を発揮するのがエクシーズモンスターだ。遊馬も私がいなくなったことで発揮できる力があるかもしれない」
「でもユニットがなくなった時ってちょっと心細いだろ」

訳がわからないという顔をしているあいつを見ていたら、余計虚しくなったから寝返りをうった。
いいさ、夜だけだ、こんなこと思ったり、言ったりするのは。


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