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君と願いを
「遊馬、これは何だ」
「短冊だよ。願い事書くの」
「なに…!書けば願いが叶うのか!」
「叶わないかもしれないけど、叶うかもしれないって感じ。かっとビングと同じだよ。勝つか勝たないかわかんないけど、とにかくやってみる!」

ショッピングモールにいたということをすっかり忘れていた遊馬は、大声を出したせいで少しだけ注目を浴びてしまって。
小鳥や鉄夫が一緒だったならまだしも、一人で喋っているとなるとやはり不自然だ。
ショッピングモールの入口脇には笹の葉が立てられていて、そこで願い事ができるように短冊とペンも近くの机の上に置いてあった。
もうすでにたくさんの短冊が飾られていて、ロビンに会えますように、だとかテストで良い点を取れますように、誰々と付き合えますように、なんていう感じのものが多かった。
遊馬はペンを持ったまま悩む。
その横でアストラルも何やら考え込んでいた。

遊馬がペンを走らせ、願い事を書きはじめたのがわかりアストラルは覗き込んだ。
遊馬が何を願うのか、少し興味があったのだ。だが覗き込まれたことに気づいた瞬間書くのをやめて、短冊をビリビリと勢いよく引き裂いた。
アストラルは破られる寸前、短冊に書かれていた文字を何とか読み取っていた。

父ちゃんと母ちゃんに

「ばっか見んなよ!人は願い事書いてるとこを見られると…えーっと、」
「死んでしまう、か?」
「そうそう!だから別の方見てろって」

遊馬は、自分の親のことを書いているのだろうか。アストラルは考える。
やはり寂しいと思ったり、会いたいと思ったりするものなのだろう。ロビン、そして風也から学んだ感情、親子の繋がり。

「よし、オッケー!」

どうやら短冊を付け終えたらしい遊馬が、なぜかもう一枚短冊を手に持っている。

「お前の分も、書いてやるよ」

アストラルは遊馬が書いた短冊らしいものを見つけ、目を細めた。

「…いや、もう充分だ」
「何だよそれー」

『早くアストラルの記憶が戻りますように!!』
下手くそな字で書かれたそれを見たら、目の前で口を尖らせている遊馬が愛おしく思えて。
本当に、充分すぎるほど何かが満たされていく。
アストラルは何と言ったらいいのかわからない、ただひたすらに温かい感情が自分の中で生まれていくのを感じながら、遊馬の後を追いショッピングモールを出た。

「俺がもし願い事叶えてやれるとしたら、アストラルはさ、何か願う?」
「なくした記憶を戻したい」
「だよな!やっぱり、そう思うよな!」

表情がパアッと一気に晴れて、うんうんと首を縦に振っている遊馬はいかにも満足したと言いたげな笑みを浮かべていた。

「俺の短冊に書いたやつ、叶うかなあ。っていうか、俺の手で叶えてやる!」
「その意気だ、遊馬」
「よーっし、帰りはデュエルしてくか!」



あきゅろす。
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