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V
「愛してるよ、V」
昔、初めてWにそう言われたとき、わからないとただ泣いた。それを見たときの、悲しげなWの表情が。Vの記憶には深く刻み込まれていた。
今だって床に乱暴に押し倒されているのに、あの言葉を期待している。もう二度と言ってくれないだろうことは、わかりきっているのに。脱がされていく服、触れられる体、それでもまだ。もう一度言ってくれたら、上手に答えられるのに。Wの言葉を待っているだけで自分から何も言わないのは、怖いからなのかもしれない。
何が怖いんだろう。拒絶されること、だろうか。
いや、自分がWにとってちっぽけな存在かもしれないということ。家族を第一に優先してるのだって、自分だけなのかもしれないということを知るのが。
「にい、さま」
「黙ってろ」
何も伝わらない。冷たい床より冷たい、Wの声。
それでも、いいんだ。今は、我慢しよう。だっていつか、家族みんなで笑える日が来るんだから。それなら、どんな痛みだって、辛くない。そう、全然大丈夫だ。もっと痛くたって、きっと耐えてみせる。
「W兄様、今度、デュエル…」
「あぁ?」
「デュエル、しましょう。昔みたいに」
弱々しく笑みを浮かべるVに目を見開き、そのままWはゆっくりと体を離した。
無言のままこちらを見下ろしている彼が、何を考えているのかはわからない。でも、Wが何を考えているかなんて、小さい頃からわからなかった。いつも人が嫌がるようなことばかりして、その癖、僕が泣いているときにはそばにいてくれて。
昔から、よくわかんない人だったんだから。今さら少し理解出来ないくらいで、悩んではだめだ。
「泣いてんのかよ」
「な、泣いてません…!」
「相変わらずだな」
そう言って小さく笑ったWは、間違いなく昔のWで。泣き虫な僕の隣に黙っていてくれるのだって、昔と同じ。
もう愛してるとは言ってくれないかもしれないけれど。僕の気持ちが少しでも伝わったなら、それでいい。今は、それだけで十分だから。


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