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.hack的なパロディ
UMAさんがオンラインになりました

ガタッ。椅子がそんな音を立てたのは、神代凌牙が勢いよく立ち上がったせいである。
遊戯王デュエルモンスターズのオンラインゲーム。ただ離れているプレイヤー同士がデュエルをするだけではなく、多種多様なダンジョンに挑み、ダンジョンの最深部にいるボスとのデュエルに勝ち、経験値やレアカードをもらう。また、プレイヤー同士の大会などもあり、世界最大規模のネットゲームである故に、そのクオリティーはなかなかのものだ、と凌牙は思っている。
ボイスチャットにUMAを招待すると、すぐに承諾の返事が帰ってきた。

『シャーク!』
『いきなり叫ぶなよ』
『俺!な!ん!と!レベル50にかっとびましたー!』
『ああ?あー、よかったな』
『ってことで、タッグ組んで大天使の情け挑もうぜ!レベル100越えのシャークがいると心強えし』
『…付き合ってやる』

ヤッターヤッターと叫んでいる遊馬を無視して、凌牙はクエストの詳細に目を通した。何やら、高貴なる天界アストラルの雲上の宮廷というダンジョンに入り、ボスを倒せばいいらしい。推奨レベルは80。遊馬はいつも自分自身のレベルより遥かに高いエリアを好む。彼のかっとビング精神はネットゲームであれど変わらないのだ。

『行くぞ。デッキはちゃんと用意したか?』
『ああ!いつものヤツ!!』

凌牙は光属性メタの自作デッキを選択しながらため息をついた。彼はカードの気持ちが何だかんだと言ってデッキを一つしか作らない。

『じゃあほら、早くエリア選択しろ』
『あっ、何か勝負挑まれた!強制的にデュエル始まったんだけどバグか!?』
『はあ!?』
『うわ、こいつレベルカンスト!』

遊馬の近くにいるプレイヤーにカーソルを合わせると、NUMBER×HUNTERというネームが表示された。
その名前に凌牙は心当たりがあった。最近BBSを騒がせている謎のプレイヤーで、レベルはカンスト。フォトンを中心としたデッキを使ってくるらしいが、銀河眼の光子竜という謎のカードを切り札としていて、彼にデュエルで負けたプレイヤーはリアルで意識不明になるらしい。
そんな馬鹿らしいうわさ話を信じる凌牙ではなかった。きっと今遊馬に勝負を挑んできた奴も、NUMBER×HUNTERの名前を使って悪ふざけをしているのだろうと、そう思ったのだが。

『!?…痛ぇ…』
『は?なに言ってやがる』

凌牙は観戦モードで二人のデュエルを見ていたが、遊馬の召喚したモンスターが普通に攻撃され、普通に破壊をされて、普通にダメージを受けただけだった。そこでなぜ伏せていたトラップカードを発動しなかったのか凌牙はツッコミたかったが、今着目すべき点はそこではない。
遊馬の苦しそうに喘ぐ声が聞こえるのだ。これはグッとくる。いやそうではなくて。

『おい、大丈夫かよ。どっか打ったのか』
『そうじゃ…なく、て、何か、ダメージ受けた瞬間、すげえ痛くなって』

『狩らせてもらおうか!貴様のナンバーズを』

いきなりボイスチャットに介入してきた声の主が、どうやらNUMBER×HUNTERのようだったが、それより彼の口からナンバーズという言葉が出てきたことに遊馬と凌牙は驚いていた。
No.39希望皇ホープ。そのカードを遊馬が拾ってきたのは最近で、いくら調べてもそのカードに関する情報はどこにもなかった。ゲームのバグか、公開されていなかったデータなのかはわからないが、エクシーズモンスターを持っていなかった遊馬にとっては、初めて手に入れたエクシーズモンスターであり、大事に使うことに決めたらしかった。ホープを手に入れてからの勝率はグンと伸びていて、凌牙もこのままでは自分が負けるのも遠くはないと思い始めているほどだった。

『おい、NUMBER×HUNTER』
『なんだ観戦者』
『ナンバーズを持ってるのはそいつじゃないぜ』
『おいシャーク!』
『ほお。データではそこのUMAというプレイヤーが持っているということになっているが』
『トレードしたんだ』
『その言葉が本当か、試させてもらおう』

遊馬とのデュエルをあっさりサレンダーしたNUMBER×HUNTERは、凌牙に勝負を挑んできた。いつもなら勝負を受けますか?はい、いいえ。の選択肢が出るはずなのだが、すぐにデュエルフィールドに飛び、カードが配られデュエルが始まった。


『UMA、勝つぞ』

NPCプレイヤーのアイコンが出ているそのキャラクターの名前は、アストラルというらしかった。
凌牙がNUMBER×HUNTERとのデュエルに敗北し、今まで聞こえていた凌牙の声が聞こえなくなったことに恐怖を覚えた遊馬は、すぐに凌牙の携帯に電話をかけた。が、何度電話をかけても応答がない。凌牙の家に電話をかけたところ、パソコンの前で倒れていたらしい。救急車で運ばれた凌牙が心配でないわけがない。
それでも、目の前のNUMBER×HUNTERは再び遊馬にデュエルを挑んできたのだ。そして凌牙の意識不明に放心していた遊馬は、このまま時間切れになるまでデュエルを放置するつもりだった。もう、なにが起こっているのかわからないのだ。
そんな遊馬の前に、彼は現れた。画面上でユラユラと動く水色のキャラクターは、遊馬のサポートキャラクターとしてNUMBER×HUNTERとのデュエルに参加してきた。

『…こんなの、俺らしくないよな』

『かっとビングだぜ!俺!』





「って夢を見たんだ」

パソコンに向かってゲームに熱中している遊馬を、アストラルは呆れた様子で見ていた。

「夢オチ、か」
「は?何か言った?」
「いや、いい」


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