[携帯モード] [URL送信]
Vさんの気持ち
「あ、えっと、Vです。今あなたのアパートの前に…あれっ?」
持っていた通学カバンをベッドに叩きつけて、携帯電話もその上に投げつけた。いたずら電話にしてもやる気が無さすぎるのではないだろうか。これでは楽しむこともできない。
あれって何だよあれって。道間違えちゃいましたテヘペロなドジっ子演出とか良いから、ちゃんとやるならやってほしい。そして何だ、Vって。いきなり名乗られても、知り合いでもなんでもないのだから、正直反応に困る。まさか、知り合いにふざけてかけようとして、間違えて俺にかけてしまったのかもしれない。それなら納得がいく、が。
そこでまた鳴り出した携帯電話を手に取り、少しだけ悩む。非通知、はこういうイタズラの基本だろう。暇だし付き合ってやろう。そんな気軽さで、通話ボタンを押した。
「Vです、今あなたの、はぁ、アパートの、はぁ、えっと…あ……」
「405号室」
「え、あ!四階、四階にいます…!」
もしかしてこれ、そういう演出のイタズラ電話?すげえ。ドジっ子でがんばりやな人から電話がかかってきて、なぜか自分の部屋を目指してくれるみたいな、誰得なイタズラ電話だったりするかもしれない。いや、ないか。携帯を手に取り、面白半分で部屋の外に出てみた。当然ながら部屋の前には誰もいない。ほっと息をついて、わざわざ確かめた自分に軽く笑いながら中に戻ろうとしたとき、お隣さんのドアの前にとてつもなくメルヘンチックな格好をした人を見つけて固まった。なんだあれ。
「あ、どうも」
にこり、素敵な笑みで気さくな挨拶をしてくれたメルヘンな人は、見たところ中学生くらいだろうか。少年なのか少女なのか迷うくらい淡麗な容姿だったのだが、声は少年のもので。ますます困惑する。
「は?」
「はじめまして。僕、Vっていいます」
「お前がノックしようとしてるの、404号室だぞ」


あきゅろす。
無料HPエムペ!