続・ロッテの監督 @ 「はい、これバレンタインのお返し。」 「え、そんなのべつに良いのにっ。」 「いいから、貰ってくれよ。」 「…うん、ありがと。」 宮村は少し照れた様に笑って、俺の手からお返しのチョコを受け取った。 …可愛いヤツめ…… 「で、さ……」 「ん?」 「…俺、お前の事が好きなんだ。お、お前は俺の事…どう思う?」 ついに、言ってしまった。もう後には退けない… 「………」 「……」 ドクン、ドクン、ドクン… 心臓が激しく収縮を繰り返す。その音だけが頭に響いている。教室内の喧騒は遮断されて、ここに俺と宮村の二人だけしか居なくなった様に感じる。 「…ありがとう、すっげぇ嬉しいよ。実は俺も滝本の事が好きなんだ。」 「ま、マジでぇっ!?」 「んな訳ねぇだろ。ばっかじゃねぇの?」 …… ……へ…? 「きめぇんだよ、いつもジロジロジロジロ見てきやがって。マジで死ねよ。あと気安く触んな。アホがうつるだろうが。」 「…そ、んな……」 ――――…っどぅあはっっ!! ………は…夢か…なんちゅう悪夢。つか、夢で良かったぁ… っていうのが今朝の出来事だ。きっと、少々自惚れていた俺に天罰が下ったんだ。 俺は、もし俺が宮村に告ったとしても、宮村が俺をフるわけが無い、なんて思っていた。そればかりか最近は、宮村ももしかすると俺の事が好きなんじゃないか、なんて頭の弱い事まで考えていたのだ。 だって、なんか……なんか、よくわかんねぇけど、そんな気がしたんだもんっ!あれから一回だけ、またお菓子作ってきてくれたし。…美味かったなぁ、あのケーキ。しかも多分、俺だけの為に。あくまで多分だけど…それに俺を見る目だって、なんか…… …っ待て待て、冷静になれ。ありえんだろ。でも、だとしたら宮村のあの超思わせ振りな態度は何だ。まさか、俺が宮村の事好きなのわかってて面白がってんじゃねぇだろうな。そんな事する様な奴には見えねぇけど……けど、もしそうだったとしても、俺には宮村に文句を言う資格なんて無い。 俺は、宮村の事が死ぬほど好きなくせに、何処かで自分より下に見て馬鹿にしてた。俺の方が勉強もスポーツも出来るし、自分で言うのもなんだが、俺、カッコイイし性格も良いし。だから、そんな俺を宮村がフる理由が無いとか……いやいやいや、大有りだろ。頭悪すぎるだろ。根本的に間違えていたぞ俺は。早く気付けよ。俺が男もイケるからって、宮村もそうだとか勝手に決めんなよな。ま、イケると言っても宮村限定での話だが。 つーか俺、マジで告ろうとしてたじゃねぇか!あっぶねぇーっ!!完全に引かれるとこだった。気付いて良かったぁ… まぁでも、取り敢えずお返しだけは渡しとこう。 そう思い横を向いた瞬間、宮村と目が合った。 “きめぇんだよ、いつもジロジロジロジロ見てきやがって。マジで死ねよ。” 「う゛わぁっ!!?」 ガタガタタンッ 夢の中の宮村を思い出した。あの、一瞬にして笑顔を消した宮村の酷く冷たい眼差しを。その途端、俺はビビりすぎて椅子から落ちた。 「え、だっ大丈夫かっ!?」 「すみませんでしたーっ!!」 「は?何が…」 「もうそーゆー目で見ねぇからっ、触んねぇからっ、マジごめんってぇっ!」 「だから何が、つか、一旦落ち着けよ。」 ……は、いつもの宮村だ。大丈夫だ… 「大丈夫か?」 「お、おう。あ、そだ…」 「ん?」 「はい、これバレンタインのお返し。」 「え、そんなのべつに良いのにっ。」 「いいから、貰ってくれよ。」 「…うん、ありがと。」 宮村は少し照れた様に笑って、俺の手からお返しのチョコを受け取った。 …可愛いヤツめ…… ………って、ちょっと待てーいっ!! これ夢と同じじゃないか?気のせいか?いや気のせいなんかじゃないねっ!予知夢?コワッ!もう無理、俺もう無理、帰るっ。 [次へ#] [戻る] |