[通常モード] [URL送信]

ほうれんそうとかレバーとか…
B

呼吸が弾んでいく。


「…っぅ……」


自分の腕を滑っていく紅い雫をぼーっと見つめていると、ふと今日の事を思い出した。


矢崎君、きっとあの時ほんとに嫌そうな顔してたんだろうな…

俺だって好きでああなった訳じゃないのに。だって、押されたから……くそっ、あんな奴ら、マジで死ねば良いのに…


また傷を増やした。


トクン…トクン…

脈のリズムに合わせて傷口から血が溢れだしていく。


痛い…

腕が……

腕よりも心が…


ぅ゛お゛お゛おおぉぉ゛っ……



sideY

今日も帰りのHRが終わって即刻帰る松井の跡を追った。気付かれないよう細心の注意を払って。

今日も松井は無事、家までたどり着いた。玄関のドアを開けて中に入る松井を見届けた後も暫く、俺はそこに立ち尽くしていた。

二階の部屋の窓から松井が見えた。カーテンが閉められる。


昼寝でもすんのかな…添い寝、したいな…………

はっ、部活遅れるっ。


至近距離で松井の寝顔を見ながら気持ちよく眠りに入る妄想から現実に戻る。


俺はいつもの様にすぐにまた、学校へと戻った。



sideM

やばい、気持ちわる…

二時間目が終わった後、トイレに行って教室に戻る途中、急に気分が悪くなってその場に蹲った。

どうしよう、保健室行こうかな。歩けるかな…

壁をつたってなんとか立ち上がった瞬間、目の前が真っ白になった。


やべぇ…貧血だ、最近血抜きすぎたかな…昨日は特に……

これは、マジで…やばい、かも……――



sideY

「なあ、遅くね?」

「何が?」


増垣が聞き返してきた。まあそうだよな。俺、主語言ってないもんな。


「松井。いつもこの時間トイレ行くんだけど、いつもより戻ってくんの遅ぇんだよ。」

「お前……きもいな。」

「うっせぇ。」


岩瀬はほんとにうっせぇ。黙れチビ。お前に言ってねぇんだよ。


「ウンコじゃねぇの?」


中村が言った。


「そうかなー?いや、それにしても遅い。」

「そんなに気になんなら見てくれば?」


てか、廊下が騒がしくなった気がする。


「…おい、大丈夫かっ!?」


廊下からバスケ部顧問の佐藤の声が聞こえてきた。ただならない雰囲気に、嫌な予感がする。


廊下に出ると人だかりが出来ていた。その中心に微かに佐藤が見える。


何だ…

………松井?松井っ!!?


「っ退け!」


夢中で人をかき分けた。佐藤が松井を抱え上げようとしている。

考えるより先に体が動いた。


ドサッ

「いてっ、矢崎?何すんだよ。」


佐藤はその場に尻餅をついて、驚いた様に俺を見上げていた。松井に触れようとした佐藤を、俺が突き飛ばしたからだ。

松井は、誰にも触らせたくない。


「あ、ごめん先生。俺が保健室に…」

「ぉ、おぉそうか。じゃあ頼むな。」


松井を抱えて急いで保健室に向かった。


「先生、松井大丈夫ですか?」

「…あぁ、貧血だね。まだ軽いみたいだから大丈夫。あんたはもう教室帰んな。次の授業始まるよ。」


そう言った保健室の先生の顔が、一瞬翳った気がした。


「…じゃあ、後でまた来ますっ。」


…何だ、この違和感……



sideM

保健室……?あれ、ここまで来た記憶無いんだけどな…

起き上がると、先生が此方に気付いて振り向いた。


「まだ寝てなさい。」

「あの、今何時間目ですか?」

「まだ三時間目。」


[*前へ][次へ#]

3/6ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!