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続続・ロッテの監督
B

「マジで!ほんとマジで一回だけだからっ!」

 頭を上げさせようと滝本の腕を引っ張ってみるけど、固くて全然動かない。

「やめろって。何もしてくれなくても滝本に頼まれたらこんなのいくらでも履くから」

「まじで?いいの?」

 滝本はぱっと顔を上げた。

「…いいよ」

 こうして俺は、生まれて初めてニーハイソックスという物を履く事になるのだった。







すいません。なんかすいません。バチが当たりそうです俺。そして、なんて優しいんだ宮村。

 宮村は履いている靴下を脱ぐとニーハイを履こうとした。しかしそのままじゃやっぱりニーハイが履けない事に気付いたようで、ズボンも脱いだ。もう既にこの時点でヤバイんです。学校で何度も穴が開く程見ているが、今日の太ももは特別だ。なんたってこれからはくのはジャージでも制服でもなくニーハイという太ももを最大限に引き立てるスーパーアイテムなんだからな!

 あぁ、興奮しすぎて死んだらどうしよう。しかし今は勿体無い。ニーハイを履いた宮村をこの目に焼き付けるまでは絶対に死ねないのだ。

 宮村は最初慣れない長さの靴下を履くのに少し手間取っていたが、もう片方になると慣れたようにするすると履いていた。ニーハイを履くというこの仕草もヤバイな。直視出来ない。でも見とかないと勿体無い。

 太もものゴムで締め付けられた所の周りのお肉がぷっくら膨らんでいる。これこれっ、まさに俺が求めてたやつ!美味そーっ!男なのになんつー柔そうな脚してんだ。どーゆー事だそれは。つか、黒にして良かった。宮村の白い脚にはやっぱり黒がピッタリだ。この上ない程に輝いて見える。

「履いてみたけど、どうかな…?」

 宮村は恥じらうように上目使いで言った。そして無意識なのか何なのか、その脚は少しだけ内股になっていた。

 かっ…可愛すぎるがな!!

 予想を遥かに超える破壊力だった。故に俺が壊れる0、05秒前だった。この後俺は意味無く床を転がったり、壁に頭突きしたり、箱ティッシュから何枚もティッシュを引き抜いて部屋を散らかしたり、窓を開けて外に向かって奇声を発したりしていたらしいが、殆ど覚えていなかった。欲に任せて宮村を襲わなかっただけ偉いじゃないか。そうだろう?誰かどうか俺を褒めてくれ!

 やっと落ち着いた時には、俺はぐったりしていたのだった。







 彼は完全に病気だと思った。意味不明な行動を取る滝本をどうにか落ち着かせようとしたけど、手がつけられなかった。そして体力を使い果たしたのかやっと大人しくなると、滝本は静かに喋りだした。

「ごめん、宮村。俺、宮村の脚しか見てなかったんだ」

「え?」

 全然今まで気付かなかった。つーか、何だそれ。

「最初はな。でも今は違う。今は宮村の全部が好きだ。宮村、さっき思ってる事全部言えって言ったよな?」

「うん」

「だから、この際だから言うよ。この好きっつーのは、友達以上になりたいって事」

 …えっ、えっ?どーゆー事?

「宮村の作るお菓子が大好きだけど、それ以上に宮村が美味そうに見えて、ずっと食べちゃいたいって思ってた。こんな目で見てるなんて知られたら嫌われると思って、ずっと言えなかったんだ。俺、スケベだし変態だし…実際引いただろ?正直」

「そんな事無いよ」

「宮村は優しいからそんなふうに言うんだ。あぁもう終りだ…」

 滝本は本当にこの世の終わりみたいな顔をした。

「違うよっ!終わりなんて言うなよ」

「だってさ…」

 何だか現実感が無い。夢なのかな。だとしたらすげー変な夢だ。ニーハイを履いてくれって必死に頼まれたり、滝本がぶっ壊れたり…どんな精神状態だとこんな夢見るんだよ。だいたい、滝本も俺が好きだなんて有り得ない。都合が良すぎる。

 でもまぁ、夢だと思えば俺も言えるかも…つか、さっきから滝本にばっか色々言わせてずるいよな、俺。

「ごめん、俺の方こそずっと黙ってた。言わなきゃ伝わんないのに、滝本に嫌われんのが怖くて気遣ってばっかで、何も言えてなかったよ。俺も滝本の事が好きだ。友達でも充分だったけど、やっぱり俺も、滝本と友達以上になりたい!」

「え…えぇっ!!?嘘だろぉっ!?べつに気遣わなくて良いんだぞ?」

「遣ってないよ」

「マジでぇっ!?」

「マジで!!」

「嘘だ…こんな事ってあんのかよ」

 滝本が独り言のように言った。

「夢かもな」

「やっぱそーゆーオチ?」

「だって俺も信じらんないもん」

「じゃあ…どーせ夢なら好き勝手にやっても良いよな?」

「えっ」


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