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純情パイン
D

「良かった。でも気をつけるよ。カレンちゃんが可愛いからついね。」


ああバカヤロー、普段の俺と居る時との温度差はなんだ。そんなに女が好きか。態度違いすぎだろ。

しかしその後、日が沈みかける頃、俺は彼から驚くべき事実を聞く事となる。




「俺、実はカレンちゃんに黙ってたことがあるんだ。」


望月君は急に真面目な口調になる。

何何!?実は気付いてました、なんて言うんじゃねーだろうな!それ怖すぎるからやめてぇー!


「実は、さ…」


…ごくり……


「俺、最初は君のお兄ちゃんを好きになっちゃったんだ。」


は………?何言って…


「お兄ちゃんが好きだから、そっくりな君を好きになったんだ。失礼だよね?…こんな事本当は君に言うべきじゃないのに。でも誰にも言わないで一人で悩んでるのが辛かったんだ。こんな事、他に言える人居ないし。男を好きになるなんて、俺は、最低だ…」


いや、え……だって、そんな素振り全く見せなかったじゃん……


「最初に君のお兄ちゃんを見た時、ほんっとにドストライクだと思った。今まで男を好きになった事なんて一回も無かったのに、突然だよ。うわ、可愛いって思っちゃったの。でも俺、男子校で周りにホモが多くてっていう環境に流されんのがどうしても嫌だったんだよ。毎日の様に色んな男に告られて、本当に気持ち悪くてさ。カレンちゃんには分かんないと思うけど、そーゆーのあるんだよ男子校は。よく男なんか好きになれるよなって思ってたのに、自分がこうなるなんて…そしたら、もう訳分かんなくなって、でもやっぱ俺は普通でありたいし、そしたら女の子版高橋君を見付けゃったっていうか…。俺は君に救われたんだよ。カレンちゃんと居ると本当に落ち着くし、凄く幸せな気持ちになれるし楽しいしね。」

「そう…ですか…」


どうしよう俺、男には興味無いけど、望月君にそんな事言われたらちょっと意識しちゃう、かも……。てか何で俺なんか…

「あんな、地味なのが良いんですか?」

「あ、怒っちゃった?」

「いや、そうじゃなくて、何処が良いのかなと。」

「う〜ん、素朴な可愛さ、かなぁ。不細工では無いけど、すげぇ可愛いわけでもない程良さとか。本当に程良いんだよ。凄く微妙な位置にぴったりハマったみたいに。てか、可愛すぎるとすぐ飽きるじゃん?…あ、また、俺さっきから失礼だよね。でも、カレンちゃんの方が可愛さで言うと断然可愛いよ?でも、きっと化粧してない方が可愛いんじゃないかなって思うんだよね…」


いや、化粧してなかったらまるっきり俺だから。


「でも、私化粧してないとどうしても落ち着かないので…」

「なんで?絶対可愛いのに!お兄ちゃんそっく………いや、俺、マジサイテーだよな。こんな事言って気悪くさせちゃったでしょ?でも、君さえ嫌じゃなければ、これからも付き合って欲しいんだ。てか、君が居ないと俺、本当に駄目になっちゃいそうで怖いんだよ。だから、お願い!」


そんな事思ってたなんて…

益々バレるわけにはいかなくなってしまった。断る事も出来なくて八方塞がりだ。軽い気持ちで自分の趣味に付き合わせていただけなのに、こんな事になるなんて…


「わかりました。」

「あぁ、ありがとう。」


望月君は心底ほっとしたような顔をしていた。

「あ、お兄ちゃんには絶対内緒ね。」

「はい、絶対言いません。」


だから本人なんだよ。これから気まずいなー…



その後、花火を見ていた時は喋らなくて良かったけど、帰り道に何を話して良いか分からず、殆ど無言だった。そのまま駅で別れる。彼が送ると言ったが、それは困るので、親が迎えに来ると嘘をついた。




それから俺は、急いで着替えて寮に帰った。そして俺は、部屋の前で立ちすくんでしまった。

あんな事聞かされた後で、今まで通り、普通にできるかな…

心臓が早鐘を打つ。


…ガチャ


「…ただいま。」

「おー、また安田君達の部屋行ってたのか?」


まあ、そういう事にしておこう。

てか、ヤバイ。目が合わせられない。普段からあんま合わせないけど。


「ああ、うん。望月君は、今日はデートか何かだったの?」


俺何言ってんだ。テンパりすぎ…


「それがさぁ、俺の彼女、お前の知ってる奴なんだよねっ。誰だと思う?」


こいつ驚くぞぉ〜みたいな顔してるけどさ……ιいや、ここは演技をせねば!




「え〜、ヒントは?」

「う〜ん、お前の身近な奴。」

「誰だろ…」

「お前の妹だよ。」



シンキングタイム短っ!意外とすんなり教えてくれるんだなι


「マジでぇっ!?」

「お前らそっくりだよなぁ。お前なんかより妹の方がずっと可愛いけど。」


そんな事言っても、もう俺はあなたの気持ちを知っているんですよ。


「あぁ、そう…」

「て事で、未来のお兄ちゃんよろしく。」


望月君はそう言って俺の肩を軽く叩いた。

残念ながら、そうなる事は一生あり得ない。


「そっか、仲良くしてあげてね。」


何気なく言った台詞だったが、それで彼は一瞬悲しげに目を伏せた。その一瞬を、俺は見逃さなかった。そしてすぐに彼は、俺に背を向ける。


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