純情パイン B どうしよう。何この展開。ありえなくね? 望月君が不安そうな顔で見てくる。断われない雰囲気だ。まあいいか、そのうちに安田達も見つかるだろう。 「じゃあ、お願いします。」 「やった!じゃあ暑いからかき氷おごってあげるよ!イチゴ味でいい?君イチゴ似合うよね!可愛いもん。ふふふっ」 ナチュラルに手を繋がれて連れて行かれる。しかも凄く楽しそう。俺はこんな望月君を未だかつて見たことが無いぞ。 「いや、良いですよ。自分で払いますから。」 「良いって!学祭の出店なんて安いんだから。かき氷100円だよ?てか付き合わせてんだからこれくらい奢らせてよ。ね?」 うわぁ、超必死。相手俺だよ?君と同じ部屋の高橋充君だよ? 結局素直にイチゴ味のかき氷を奢ってもらった。本当はメロン味が良かったが、とても言える空気じゃなかった。 「あはは、舌赤くなってるよ。」 「べー」 「可愛いっ!」 ………えぇ〜ιデレデレじゃないすかぁ。いつも俺に冷たいのに女の子相手だとこんなんなっちゃうんだ。男子校に居ると普段は見れない意外な一面を知った。てか凄い罪悪感。ごめんね、望月君。 そしてずっと手を繋ぎながら色んな所をまわった。彼と一緒にいると周りの視線を集めてしまう。いたたまれない。いくら俺なんかが着飾ってバッチリメイクしたとこで、彼とは到底釣り合わない。周りの人達の声が聞こえる。 「えぇ〜あの綺麗な彼氏にあのコ?」 「普通だよね〜」 ちくしょうっ!悪かったな普通で! 自分でもなかなかだと思っていたのが一気に自信喪失。俺はこの先もっと化粧が濃くなるかもしれない。それほど悔しくてショックだった。そうとも知らず、望月君はずっと楽しそうにニコニコしていた。 「あ、そうだカレンちゃん!メアド教えて?」 そう来たか。まあ別に問題も無いだろうと教える事にした。 「じゃあケータイ貸して下さい。私の今電池切れちゃって、赤外線出来ないんです。」 「そっか、はい。」 望月君のケータイを受け取り、俺のアドレスを打ち込む。彼はいつもの俺には興味無いし同じ学校だし同じ部屋なのでアド交換をする必要もなく、お互い番号もアドレスも知らなかった。あんま仲良くなくて逆に助かったかもしれない。今更俺でしたぁ、なんて事絶対に言えないし。 そして、漸く安田達を発見。俺のカバンも持っている。遠くで手を振っていた。 助かったぁ〜。 「じゃあ私、もう帰らなきゃ。」 「そっかぁ…」 望月君が残念そうに肩を落とす。そんなガッカリせんでもまたすぐ部屋で会えるっつーの。 すると次の瞬間、抱き寄せられたかと思うと、ゼロ距離に望月君の顔。唇に何かが当たっている。 え?うそ…だろ……? うわーーーーー!!!!!俺のファーストキスがぁ… 固まって言葉も出ない。 「じゃあね、後でメールするよ。」 そう言って彼は行ってしまった。ふと安田達の方を見ると彼等も遠くで固まっていた。 あああどーしよー。まあ、汚いおっさんにキスされた訳じゃないし、望月君なら全然許せるけど、問題は彼だ。キスした相手が俺だなんて知れたらまぢでマズイ。殺される。だってホモとかマジきめぇっていっつも言ってるもん。 「はぁ〜」 思わずため息。あれから毎日彼から頻繁にメールが来る。俺の着信はいつもサイレントにしてある。彼と一緒にいる時に同じタイミングでケータイが鳴ったらおかしいからだ。 今も安田達の部屋で高橋カレンを演じるメールをしていた。 「お前大変だなww」 「…ぜってぇ面白がってんだろ。」 ニヤニヤ笑う河崎にちょっとムカついたので、彼の腹の肉をつねってやった。柔らかくて触り心地が良い。 「いてて…だって実際面白いし。なんてメールきた?」 『今度の日曜暇』 彼のメールはいつも絵文字いっぱいで来る。それもまた意外な一面だ。 「暇だって言っとけ。」 「えぇ〜。」 「どうせ断わってもまた違う日誘われるって。カレンちゃんガーンバ!」 くそぅ、こいつら… 『暇ですよ』 取り敢えず予定も無いのでそう送った。 『ほんとじゃあ海行かない水着持ってる』 それはマズイ!!水着は無理だろ!! 『ごめんなさいm(_ _)m私、水着は持って無くて…それに日に焼けるのが嫌なので…ごめんなさい、せっかく誘ってくれたのに我が侭言って』 『そっかそっか、こっちこそごめんねm(_ _)mそーだよね…じゃあお祭りはどう花火あるらしいよ』 『あ、行きたいです 浴衣着て行ってもいいですか?』 へっへっへ、浴衣なら持ってるんだぜ。そして結構好きなんだよな〜。 『ほんと楽しみだなぁじゃあ日曜昼一時、駅前で待ち合わせでいいかな』 『はい、よろしくですっ』 [*前へ][次へ#] [戻る] |