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それはたとえるなら隠れ家みたいな、
※人道的にだめなお話、微妙にえろ入るかも

※ごくつなごくと、我らがつなひば

※つな受けもまあいける、と言ってくださる方むけです…











今日が始まってすでに、四度目だった。
ツナが死にたいなんて思うのは。

「あーあ…修行ばっかでつまんない」

ツナは、足を投げ出し、芝生に寝転がった。
空は鈍い灰色で、ツナを慰めるように涼しい風が吹いた。






《それはたとえるなら隠れ家みたいな、》





――もう生きてたってしようがないなぁ、俺。

こうやって修行して強くなって戦って勝ってまた修行して。

このサイクルに果てはないんだ。
俺が戦闘マニアの雲雀さんみたいな性格なら、喜んでマフィアの世界に飛び込んでいたのかなぁ。


このままボンゴレをついだら、自分の立場やファミリーのために、たくさん守ってたくさん殺して。
で、さんざん繰り返した末に、また誰かにそれをつがせる。


「俺が死んだら、リボーン怒るよな」

死にたいわけじゃない、痛いのは嫌いだ。

けれど。

「母さんは泣くだろうな…」

ツナは(もし俺が、)と仮定して想像の翼を羽ばたかせる。


俺が死んでリボーンがイタリアに帰ったらきっと、ビアンキはそれについてくよね。
イーピンは師匠のもとに戻って、ランボはボヴィーノファミリーに帰るか、もしかして母さんにすっかり懐いているから、ずっとウチにいるかな?
しまいには息子みたいに扱われてたりして。
多少頼りないけど、あいつなら大きくなった後も母さんをきっと大切にしてくれる。

「でもやだなー、それは…」

それは。
さびしい。

独りでいくのは、とてもさびしい。

(だって俺、みんなが好きなんだもん、)

(俺のいなくなった世界でみんなが泣くのも、)

(俺のいなくなった世界でみんなが俺を忘れて笑うのも、)

(両方イヤだよ。両方さびしい)


ツナはそう思って。次いで、考えついた。


「うん、誰か道連れが必要だよな」



泣かれても忘れられてもふたりなら。
きっと、さびしくない。



*****

(さあて、誰を誘うかな?)

獄寺くんに山本、ランボ、イーピン、ハル、お兄さん、雲雀さん、…


うーん。
ランボやイーピンは可哀想だな。
小さな子どもを連れてくなんて俺はそこまでダメじゃない。

お兄さんも、京子ちゃんが悲しむからだめだ。

じゃあ、ハル。
ハルは最初は俺を止めようとするだろうけど、情熱的で一途な彼女なら、受け入れてくれるかもしれない。

しかし待て。

「ツナさんといけるなら、ハルは本望です!」
さあ、やっちゃってください!って震えながら言われたりして。
そんなハルに俺が手をかけられるのか?

間違いなく人生で一番、自分を想ってくれた女の子を殺せるかどうか、俺には自信がない……。



次は山本だ。
山本はどうかな。
なんか山本に話したら
「腹減ってるから落ち込んじまうんだって!何か食いに行こう。な?ツナ!」

…なんてどんどん違う方向に流れて行く気がする。
そうしたら俺も山本の天然ぶりに絆されちゃって、いつの間にか死ぬ気(この場合比喩ではなくて本物のほう)がなくなるかも。
(だって山本といると、嬉しいし楽しいから)

それとも、「俺は真剣なんだ」って、「お願いだから俺と一緒に死んでよ、山本となら、俺さびしくないんだ」って言ったら、山本は頷いてくれるかな。
黙って俺の頭を撫でて、「わかったよツナ、いいぜ」って。
山本ならそう言う可能性もありそうだ。

(でも。山本、…野球…)

死んだら、二度とバットを握れなくなる。
ボールも投げられない。

山本があんなに好きな野球を、俺のせいで出来なくなるなんて。
大好きで才能もあって、山本はマフィアと関わらなければ、野球選手にだってなれる気がするのに。
(…山本は、野球がある)


愛する誰かと死ぬ以外に望みがない、俺とは違って。



**


「じゅうだいめ〜〜っ」

脳内でひたすらシミュレーションを繰り広げていたツナのもとに、自称右腕、獄寺隼人が駆け寄ってきた。

「あ、獄寺くん」
(ちょうどいいところに、)

「10代目!此方にいらしたんですねっ」

全速力で走り回っていたのだろう、獄寺の額には汗が浮かんでいて、透明な雫をキラキラさせたまんま、グイッと両手でツナの細い肩を掴んだ。

「探したんですよ、俺…っリボーンさんから10代目が突然いなくなったって聞いて。学校にも家にもいらっしゃらないし、何かあったんじゃないかって…」
「ご、獄寺くん、」

泣き出さんばかりに顔を歪めて獄寺は白面をツナに擦り寄せた。

「ほんとにご無事で良かったッス、10代目、良かったッス!」

ツナには、何故獄寺がこうまで自分に対して必死なのか全く解りかねていた。
出会った当初、獄寺にビビっていた原因のひとつだ。

「あの…獄寺くん、ちょっと、いたい」
指輪だらけの獄寺の指がいまだツナの肩に食い込んでいて、ツナは幼い顔を歪めた。

「すっ、すいません!すいません!!」
慌てて力を緩め獄寺は頭を下げる。
が、手は離さないまま。

(獄寺くんが俺のこと好きなのはわかる。自分で言うと自意識過剰っぽいけど)

だが一方でツナはそれがただの自惚れでないことに薄々かんづいていた。

ふたりで喋っている時に山本の話を出すと拗ねまくるし、ハルとはツナを争っていつも本気の口喧嘩をしている。
ツナのほっぺにチューをしたクロームには怒り狂って掴みかかろうとしたくらいだ。

…とにかく獄寺隼人はツナが恐怖を覚えるほど、ツナ命だった。

(スキンシップ多いし、俺が他の人と話すとすぐヤキモチやくし。理由は分かんないけど…。じゃあ、獄寺くんにしようかな)

「ねー獄寺くん。突然で悪いんだけどさ…きみにお願いがあるんだ」

そう告げただけで、獄寺の灰緑の瞳がランランと輝き、歓喜の炎が溢れ出た。
少なくともツナにはそれが見えた。

「お任せください、10代目!10代目のご命令とあらばっ俺は命に代えても必ず叶えてご覧にいれます!!」
「そ…そっか〜ありがとね!」

獄寺の勢いに押されながらも、ツナは悪くない反応を頼もしく思った。

「えっとね…いまからね、俺と心中してくれないかな?」

それ故に、ツナの願いを聞いた獄寺の顔が真っ白になった時に、ようやく我に返れたのだ。

「じゅうだいめ…………」

ツナは、それしか言えない獄寺に、自分の浅はかな考えを思い知らされた。

(そうだよな、ハルだって山本だって、単なる俺の妄想…ちょっと旅行に行く、なんて話じゃない。命を失うことに付き合うなんて、誰が言う?俺は馬鹿だなぁ)

「………お考えは変わらないんですか…?それが、10代目の、望まれることなんですね?」

じんわり汗をにじませるツナに、獄寺はようやく言った。
「え、と…」

冗談だと言いたかった。

「…つまり、山本じゃなく、アホ女でもなく、この俺を誘ってくださるってことは…」


「右腕…いえっ、永遠を共にする伴侶として、俺を選んでくださったと、…そう受け取っていいんすよね!!」

(獄寺くん独自の解釈キター!!)

突然、ニカニカと上機嫌になる獄寺は、ツナが何を言い出しているのか、本当に理解しているのだろうか。

ツナは自分が言い出したことなのに何がなんだかわからなくなってきた。







浅はかなツナと、

ひたむきな獄寺氏


続きます。


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