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ものぐさ少年のペット事情:592718
※不健康三つ巴、獄×黒ツナ(×Mひばり少々)






*ものぐさ少年のペット事情*



「ひばりさんの肩にとまってる小鳥――ヒバード、だっけ?あの黄色いヤツ。めちゃくちゃ可愛いよねぇ獄寺くん」

「はあ、まあ。貴方がそう言うんでしたら、めちゃくちゃ可愛いです、10代目」

(ってゆーか、貴方が可愛いです10代目。
何スか、『27』ってデッカく書いたTシャツ着て、小学生みたいに半ズボン穿いて、ピン留めでフアフアの前髪を留めたりして!)

獄寺はツナと会話しながら、愛しの10代目のまあるいオデコから膝小僧まで、何往復も視線を動かして、夢中で見つめていた。

「獄寺くん聞いてる?あのね、俺ペット飼いたいんだよね〜。でもウチ、ランボ達いるだろ。これ以上お守りする対象増えると勉強する時間なくなりそうなんだ……なんか手間がかかんないペットいないかな〜…」

「お言葉ですが10代目、手間が全くかからない生き物なんていませんよ。何しろ10代目のお家はアホ牛が暴れて危ないですし、姉貴がいつ10代目の大事なペットを食材に使っちまうか分かったもんじゃないです」
「だよね!俺もそれが心配なんだよ!」

(俺は10代目がペットなんか飼って、更に俺を構ってくれなくなるのはゴメンです。ペットなんか要りません)

「あーあ。でもさぁ…猫とか犬とか、俺に超懐いてくっ付いて甘えてきちゃったりとかしたら…いいよなぁ、やっぱり飼いたいなあ」
「はあ」

(俺が犬だったら良かったのに。俺が犬だったら、10代目は俺をお膝に乗っけて頭を撫でてくださるのに、そうしたら俺は誰にも遠慮なんぞせず、貴方の柔らかそーなほっぺたを好きなだけ舐めたおせるのに、)


(獄寺くんまたトリップしてるみたいだ)
ツナは獄寺の妄想熱視線を無視して、こないだ撮らせて貰ったヒバードの写真を眺めた。

(うーん、やっぱ欲しいな、俺だけのペット。世話しなくてイイようなの)



それから1ヶ月ほどたった日曜日の朝。
獄寺はツナに呼び出されて、意気揚々と彼の家にやって来た。
「おはようございますッ、10代目!」

階段を降りてきたツナは、獄寺の大好きなキラキラとした笑顔で、ごくでら君。日曜日なのに呼んでゴメンね。と、彼を気遣ってくれた。

(謝る必要なんてないんです、学校休みの日にも会って頂けるなんて、俺は嬉しくてたまらねえ。ああ、今日もなんてお可愛らしいんですか10代目)

「いえっ、俺は貴方の右腕ですから!いつだって喜んで駆けつけますよっ」
コッテリ熱いセリフはどうにか飲み込んで、にかっ、と笑うとツナは嬉しそうにスニーカーを履いて、獄寺の袖を引っ張った。

「行こっか」
「はい!10代目!」

何処へ?なんて聞かない。
ツナのそばが、獄寺の居るべき場所。
向かう場所はどこだって全然構わない。

それが、例え休みの日の学校でもだ。

学校に到着した後、日差しの眩しい廊下を歩きながら、ツナは得意気に告げた。
「あのね、前に言ってた手間のかかんないペットが欲しいって話なんだけど、獄寺くん、覚えてる?」
「はい、10代目」
(貴方が俺に仰ったコトなら全部覚えてますとも)

「それね、ついに手に入ったんだ!どうしても最初に獄寺くんに見せたくて…それで一緒に遊んでくれたらなぁ、なんて…いいかな?」

(10代目!10代目にとって俺はやはり特別な存在なんですね?!やべぇ、マジで嬉しい!!10代目がペット飼うの反対でしたけど、俺も一緒に遊んで頂けるなんて、すげー光栄です!……そう、光栄、なんスけど、)


「……あの、10代目。ここ、応接室ですよね?」
「ん。応接室の中で飼ってるんだよ」

獄寺はぽかんとツナを見た。
見当がつかない。
普段、風紀委員長の根城と化している応接室に、一体何が。

ツナはノックもせずに、扉を開けた。
「ただいま〜。イイ子にしてたー?」

(……え?)

応接室の中、床の上で。
黒いものが蠢いた。

(ま、まさか……)
出入り口で立ち止まった獄寺のそばまで、ソレは猫のように四つん這いで歩いてきて。
ツナの足元にすり寄った。

「何そいつ。どうして連れてきたの…?」

(10代目、嘘ですよね、だって、そんな馬鹿な)

「怒らないでよ、せっかくペット飼ったんだから自慢したくてさ…よしよし、可愛いね。機嫌直して」

なんと、ツナがしゃがみ込んで優しく頭を撫でているそのペットは。


風紀委員長の雲雀恭弥だったのだ。


「もっと撫でて、沢田。撫でてよ」
「甘えん坊だねぇ」
ソファに座ったツナの脚の間に跪いて、雲雀は前から彼の腰に抱きついている。
顔を下腹部にスリスリ擦りつける仕草は猫そのもの。

彼が動く度にチリリ、と小さな音が鳴る……それは雲雀の首に巻かれている赤い首輪に付いている鈴の音だった。

一体何をどうしたら、こんな結果になるのか?

一切は不明だが、確かに雲雀はツナのペットになっている。
ツナはにこりと獄寺に笑顔を向けた。
普段通り、全く邪気のない、ツナ。

「獄寺くんも、おいでよ」
「じゅ…じゅうだいめ……なんなんスかコレ…」
獄寺はその場に凍りついて動けない。
異常すぎる光景に、足元が崩れ落ちていきそうで、怖かった。

「だからさ、ペットだよ。どうしても飼いたくて。雲雀さんならさ、当然手間なんか掛かんないし。猫みたいで可愛いし。ね、超お手軽だろ?」

(、無茶苦茶だ…10代目、貴方はなんで…)
獄寺の整った顔が歪んだ。

「さわだ、僕のどが渇いた」
「うん、ミルクあげようね〜。獄寺くん、ソコの袋に牛乳入ってるから。この器にいれてあげて」

ツナが取り出したのは丸い容器。
どう見ても猫用の器だ。

動けないと思った体は、それでもツナに忠実だった。
震える手でツナからの命令を遂行し、なみなみと牛乳を注いでやると、雲雀は従順に屈み込む。
ぴちゃぴちゃ、可愛い音を立てて、赤い舌をミルクの中で泳がせ始めた。

這いつくばった屈辱的姿勢で、首輪の鈴を鳴らしミルクを飲む雲雀は、もはや獄寺の知っている雲雀ではない。
艶やかな黒い髪も、白い肌も彼のものに違いないのに。

そしてそれは、獄寺が今まで崇拝してきたツナにも言える事だ。

「イイ子、イイ子。大好きだよ…」
獄寺が見たことの無い顔をして囁くツナと、褒められて嬉しげに目を細める雲雀は、既に立派な『飼い主と飼い慣らされた猫』だった。



***




「ありがとうね、獄寺くん。今日は付き合ってくれて…獄寺くん?」

子供のようにみっともなくしゃくり上げなかった事だけでも誉めて欲しい。
帰り道、ツナの声を聞いて涙がツウとこぼれた。

「っ、ぅ……く、…」
灰色混じりのターコイズブルーの瞳から、ボロボロと雫が落ち続ける。

「ご、っ獄寺くんどうしたの!?俺なんかした!?」
「…じゅ、だいめ…どうして、なんですか…」
雲雀を見た時から、ずっとずっと心に湧き上がっていたものを、ようやくツナにぶつけられる。
だが問うた意味が分からないのか、ツナは困ったように小首を傾げた。

「どうして!俺じゃなくて、アイツなんですかっっ!!?」
(だって、俺がペットになりたかったんだ!なのに、なんであんな!あんな可愛げのない雲雀なんかを優しくあやしたりして!)

「俺だって!貴方の……っ、」
そこまで叫んで気がついた。
ツナは困った顔で、微かに笑みを浮かべていた。

(ああ、この方は)
(分かっているんだ)

獄寺は泣くのを止め、ツナの前に膝をつく。
彼の望みをいち早く悟って実現するのは、右腕としての最重要スキルなのだ。

(いや、右腕どころじゃ、ない。俺は、)

「10代目」
「なあに、獄寺くん」
「犬も、飼ってみたくありませんか?」

ツナの手が伸び、獄寺のプラチナブロンドの髪を撫でた。
特別にやらかい、高い体温を持つ手のひら。

気持ち良くて幸せで。
獄寺は色素の薄い、長くてきれいな睫毛を震わせた。

「可愛いワンコだね…」

(俺は、貴方の一番近くに侍る、犬になりたい)

「嬉しいよ、獄寺くん。今日から君は俺の大事な大事な愛犬ね!」

(よしよし、ニャンコに続いてワンコもゲットしちゃった)

(雲雀さんに比べて獄寺くんの方はちょっぴり世話が焼けそうだけど…ひとまず)


(いっちょあがりってコトで!)




************


お疲れさまでした〜

まさかの裏無し調教。
獄寺くんは頼めば簡単に犬化できるので、あえて泣かせて自らペット志願させるツナ様。
雲雀さんの謎めいた調教方法は、企業秘密…


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あきゅろす。
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