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おまえと俺と、なんでもない日
※ちょっと変なツナ様



+おまえと俺と、なんでもない日+




俺はドアを開けたソコに広がる光景を見て、軽い目眩を覚えた。
まるで奇跡が舞い降りたようだ。
キリストの神業に魅了された使徒の気持ちが分かる。
有り難い、有り難い。


あの六道骸が。

俺ん家で携帯ゲーム機に夢中になりながら、ポテトチップを食べてるなんて。

美味しいのかな?
俺が余り好きじゃない、のり塩のポテトチップ。

ゲームする?
お菓子食べる?ポテトチップと茎ワカメあるよ?
飲み物とってくるから、適当に座って遊んでて。

俺が言ったから、この状況になった訳だが。
骸もこうしてると普通の子に見え…………はしないけど。
足は長くてスタイルいいし、ゲームを操作する指も爪先まですごい綺麗。
毎日、入念に手入れしているに違いない。

横顔も俺みたいに鼻低くないし、外国の俳優みたいに整っている。
髪型もセットに小一時間はかかりそうな凝った形状を保ってるし。
俺にはオシャレなんだか冗談なんだかわからない髪型だけど。

何でコイツが家に来て、しかも遊んでるんだろうなぁ…

「綱吉くん?」
「何、むくろ」
「僕、このゲーム得意じゃないです。他のありませんか?」

骸自身はあんなに強いのに、格闘ゲームは苦手みたいだった。
『パリッ』と小気味よい音を立てて、骸はのり塩のポテトチップを食べる。

奇跡だ。
奇跡が舞い降りた。
こんなに浮き世離れした綺麗な奴が、指を脂と塩で汚してポテトチップ食べてるとか。

「美味しい?」
「ええ、まぁ。キライではないです」

骸はまた一枚それを食べてから、ようやく指先の不快感に気づいたみたいだ。
キョロキョロ俺の部屋を見回し、
「綱吉くん。ティッシュください」
って言った。

あの骸が、ティッシュという言葉を口にするんて!

俺はもう、すっかり感慨深くなってしまい。
何故か骸の細っこい手を掴んで、指先を舐めてしまった。

「あ…」
「しょっぱい、」
骸はギョッとした目で俺を見てた。
でも嫌悪や怒りの色はなかったから、塩味が無くなるまで骸の指をしゃぶった。

「僕はティッシュくださいって言ったんですよ?」
我に返った骸は手を引っ込めた。
不満げに、やや尖らせた薄い唇は桃色。
この世で一番素晴らしいものに見えた。

「あ、むくろ」
「なんです?」
「唇に海苔、ついてる」

これまた、何故だか分からない。
何故だか分からないんだけど、反射的に俺は骸の美味しそうな(変態ぽいけど、本当に美味しそうなんだ)唇を舐めた。
ペロペロ舐めて、海苔を取ってあげた。

「…君って、男の子が好きなんですか?」
元通りに骸の唇は美しい桃色一色になったのに、今度はしっかり非難の口調だ。
しかも見当違いでお馬鹿な質問。
俺は、再び奇跡を体感した。
あの抜け目ない理知的な骸がこんなお馬鹿さんなこと言うなんて。

「そんな訳ないじゃん。海苔がくっついてたからさ。怒んないで」
「嘘つきはキライですよ。綱吉くん、僕が好きなんでしょう?」
「うん。骸は好きだけどさ、男が好きなんじゃないってば」

骸は、自力でティッシュを探し出し(ベッドの上、クッションの下敷きになっていた)、指をゴシゴシ拭いた。

「ねぇ、骸」
「騙されませんよ、僕は!君などに謀られてたまるものかっ」
「えーっ、何の話だよ!?」
骸は、唇どころか頬から耳たぶまで見事なピンク色になっていた。
怒らせてしまった。

「骸の言う通り、俺は骸が好きって言ってるんじゃん、変なの」
「……………」
黙り込んだ骸がゴミ箱に投げ捨てた使用済みティッシュは、惜しくもゴミ箱のフチに当たって。
ポスンと床に落ちた。

また一つ、奇跡が。
俺は紙屑を拾い、挙動不審になった骸を見つめた。

「いいからそのポテトチップ全部食べてから帰ってよ?俺、のり塩味、食べないからさ」
「…………そしたらまた、僕の指を舐めるつもりですか?」
「うーん、どうだろ?ねぇ、骸。次はパズルゲームにする?」
「…はい、それで、いいです」

骸の赤面の理由。
怒らせてしまったんじゃなくて、恥ずかしがらせてしまったんだと、俺は気づいた。
骸が俺を無視して帰ったりせず、まだソコにいてくれたから。

「今度はチョコレートを用意しておいてくれると嬉しいです」
「お前、チョコレートが好きなんだ?」

俺も好きだよ、のり塩のポテトチップより、チョコレートの方が。



ああ、チョコ味のお前の指、早く舐めたいな。





end



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変態ツナ様と乙女むくろさん。


お題配布元:確かに恋だった
ふたりの指7題:指を舐める







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あきゅろす。
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