あいのいろ
あいのいろ
「……なんの本をご覧になってるんですか、10代目」
静かな図書館。
画集や美術画法の本が並ぶコーナーの一角で一冊の本の頁をめくる綱吉に、獄寺が小声でたずねた。
「……」
にこ、と笑い、綱吉は黙って本の背表紙を獄寺に見せる。
「日本色名事典、ですか…」
取り立てて綱吉の興味を引くような、そんな本ではないような気がするが。
「ちょっと、調べようかと思って」
綱吉はくり、と琥珀の瞳を獄寺に近づけ、ほんの少しその大きな瞳を細める。
「なにをです?」
小さな声でしか話せない図書館では、自然にお互いの距離が近くなる。
獄寺が軽く身じろいだのを察してか、綱吉は意味ありげに笑った。
「俺が一番好きな色ってね、和名では白緑、っていうんだって」
「びゃくろく、」
「綺麗な名前でしょ?」
「はい。どんな色なんすか」
10代目の右腕として、それは是非とも知っておかねーと!
意気込んで色見本を覗きこむ獄寺。
「このいろだよ」
指さされた、透明感のある淡い緑色に、ぽかんとした。
「世界で一番きれいな色だと思うんだ…きみの、ひとみの色」
獄寺は、目をぱちぱちして、それから、
「…あはっ、今の獄寺くんのほっぺたの色は桃染色だね。かわいい色」
静かな図書館。
人気のないのをいいことに、愛しいそのひとを思い切り胸に抱き締めてしまった。
おわり
***
「俺はっ、10代目の琥珀色がこの世で一等すばらしい色だと思います!大好きです10代目ぇえ」
「はいはい、図書館だから静かにしようね獄寺くん」
「きゅーん……」
三割の飴と七割の鞭。
それが綱吉の獄寺調教法。
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