[携帯モード] [URL送信]
正直者
※59寺氏変態注意報





+正直者+


「10代目!突然ですが10代目の手相見て差し上げてもいいっスか?俺、詳しいんで」


うわ、また獄寺くんが思い立っちゃったよ…
最初にツナが思ったのはそれだった。

場所はツナの部屋、時は夕方。
ツナは獄寺に手伝ってもらい、今日の課題に精を出していた。
「な、なんで、急に手相?」
「駄目っすか、10代目」
諦めずに、机の向こう側から獄寺が片手を差し伸べてくる。
「駄目じゃないけどさ、今勉強中じゃない?手相とか後にしようよ」
「後だったらリボーンさん帰って来ちまうじゃないですか。だから今のうちに…なあに、ちょっと見るだけですから!」
彼がニカニカと笑う。

どうせ獄寺の助けがないと宿題を進められないツナは、仕方なく右手を獄寺の手のひらに乗せた。
(いつもヘコヘコして後ついてきて、『何なりとお申し付けください10代目!』なんて言ってくるクセにすぐこれだ、君は俺の言う事なんか聞いてくれやしない)

「うぅ…!?」
獄寺の指輪だらけの手でキュウッと利き手を掴まれると、ツナの唇から嫌悪とも困惑とも取れる呻きが漏れた。

(ご、獄寺くん!手ぇ!スゴい汗ばんでるぅう!)

「じゅ…10代目のお手は、フワフワして柔らかいですよね……それにちっちゃくて、あったかくて、たいへんシブくて可愛らしいっス……」
「手相見ろよ!」
当初の目的を忘れた獄寺が両手で以て、ツナの手をぎゅむぎゅむ愛でているので、ツナはついクセで突っ込みを入れる。

「!?す、すいませんっ、」
ビクッと獄寺の肩が大袈裟に動くとツナも反射的にビクッと動いた。

「…で、どうなのかな?」
「はい!やっぱボスって感じの手相ですね流石10代目、覇者の気配が!」
「何その『ボスって感じ』ってニュアンスだけの見解、覇者の気配が俺からするなら世の中全員支配者階級だよ」
「指舐めていいっスか?」

(まったくさ…何で獄寺くんは俺に関してはこうなんだ?)

「いい訳ないじゃん、何言ってんの獄寺くん……」
「えと、スイマセ、…ご、ご存知ありませんか10代目。指舐めたら皮膚の味で、相手の気持ちが分かるらしいです」
「あー昔あったね、そういうギャングの漫画、あれ日本の漫画だけど、イタリアでも流行ってたんだってね?」
「ね、10代目、いいですか?舐めていいですか?」

ツナは空いている方の手を伸ばして、獄寺の、無駄に高くて格好いい形の鼻をギュッと摘んだ。
「ふぁっ、何スか?!」

「嘘つきは嫌いだよ、俺。…手相に詳しいとか嘘でしょ?」

睨んでやれば、獄寺は途端にしょぼーんとへたれた。
さっきからツナに見えている獄寺についたオプション…ピコピコの犬耳もブンブンの尻尾も力を失う。

「ご く で ら く ん?」
「あ、の……」
ツナの、例え低めても高い子ども声に心底ビビるのなんて世界中探しても獄寺だけだろう。
俯いて、そのくせツナの愛らしい手を未だにしっかり握っているのだから、大したものだ。

「はい…俺、手相なんか全然詳しくないッス。10代目に触りたくて、嘘つきました…」
「あはは、そうだと思った」

ハッと主人を見上げると、ツナはクスクス楽しそうに笑っていた。
ふと柔らかく細められた琥珀色の瞳が優しく獄寺を照らす。
「正直に言ったご褒美あげる…好きにしていいよ」
但しリボーンが帰ってくるまでに終わらせてね、と条件を後付けしたツナの声はこの銀髪のワンコに届いたのだろうか。
語尾まで聞いたかどうかのタイミングで、ツナの指を手のひらの方からしゃぶる音が響きだした。

「じゅ、らいめ…俺、今度ほんとに…てそうの本読んで、べんきょ…し、ます…」

あなたの事、もっと知りたいので。

荒げた息でそれだけ告げて獄寺は、男子中学生にしてはチョッピリいかがわしい行為に没頭し始める。

唾液をたっぷり絡めた熱い舌が、本当に犬みたいだ。
しろくて細い脆弱なツナの指。
一本一本、根元から爪先まで丹念になぞる獄寺の赤い舌がいやらしくて、ツナは瞼を下ろした。

(指舐めて、気持ちが分かるならさ、察してよ)

獄寺なら、一通り本を読破すれば、完璧に手相占いを頭に入れられるに違いないが。

(君に触れられると、心臓ドキドキして死んでしまいそうなんだよ、俺)



帰宅したリボーンが不埒な駄犬に向かって無表情に発砲するまで、後5分。





おわり!


*********

なにってないけど、変態ちっくな獄寺氏になってしまいました。
沢田さん、クールですがちゃんと犬寺氏を好いております。
うちのごくつなは相思相愛。

余談ですが、イタリアで流行ったギャングの漫画っていうのはジョ/ジョ/第5部の事です。
正確には、汗の味で相手が嘘ついてるか分かるってエピソードでした。



お題配布元:確かに恋だった
ふたりの手7題:手相を見るふり








1/1ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!