ナイフ
獄×病みツナ、ちこっとだけ血表現あり
*ナイフ*
俺の手の中でナイフは銀色に光っていた。
物騒な煌めきが、絶えず家族が行き来する俺の賑やかな部屋を異質にさせる。
静かで、冷たい、寒気のするような。
獄寺くんはその綺麗な顔で、俺をジッと見つめている。
「テレビドラマとかでさ、」
「はい」
「手首切って自殺とかさ、よくあるじゃん?」
「はい」
「あれ、こういう風に切るよね、普通」
俺は獄寺くんの白い手首に、そっとナイフを当て、横向きに軽く引いた。
伸びる、薄く細く赤い線。
「…、はい」
ピリリと痛みが走ったであろう皮膚。
獄寺くんの眉間に、ほんの一瞬皺がよる。
血がゆっくりと滲んだ。
「……あれじゃ、結構助かっちゃうらしいよ、ホントかどうか知らないけど」
「そうですか」
ナイフにはほとんど血がついてない。
刃を眺めたまま、今度は俺の手首にソレを当てた。
獄寺くんにした時とは向きを変えて。
「10代目」
「横向きじゃなく、こうやれば」
「10代目、」
「動脈を縦に引き裂くと良いんだよ、確実に死にたい人は」
「10代目!」
俺が微かに刃先をつけて、手首から肘の内側に向かってナイフを動かそうとすると獄寺くんが大きな声で俺を呼んだ。
彼の骨ばった大きな手がナイフを握る俺の右手首をグイと掴む。
「…冗談だよ、ただの」
驚いた?、笑い飛ばしたら、獄寺くんは強張った顔にムリヤリ笑顔を作った。
けど腕には、彼の震えが伝わってくる。
「ちょっと、ビックリしました」
獄寺くんは、時折急に始められる俺の悪ふざけに振り回されてくれる。
これは単なる余興だ。
カッコいい獄寺くんの、怯えた表情が大好きなんて言ったら、いくら彼でも引くだろうか。
「しまいましょう、それ、ね?10代目、貸してください」
明るく、けれど用心深く、俺からナイフが奪われた。
銀色の輝きは、柄の中に折り畳まれて消えてしまう。
獄寺くんは疑り深いのだ。
「獄寺くん」
俺が握りしめると、獄寺くんの冷たい手はまだ震えていた。
「ごめんね」
自分を傷つける事は彼も傷つける事、それに快感を覚えるなんて罪深いよね
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ツナ様軽く病んでしまってます。
ちょっとだけ。
59寺氏が常にドキドキしてて可哀想ですね、このごくつなは!!
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