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世界はキミのもんだ!
星を不法投棄(イギリス)
「失礼、日本はいるか?」

日本さん家の玄関を掃いていたら唐突に背中から声が掛かった。
思わず箒を取り落とし、驚きにびくりと肩をすくめる。

「わ、悪い…大丈夫か?」
「す、すみません…」

相手も驚いたのか、流暢な英語の中にわずかな焦りを感じ取れた。
動揺しながらも振り返れば、太陽の光に反射する綺麗な金髪に目がくらむ。
こちらを心配そうに見る翡翠のような瞳は、日本人には見られない不思議な強さがある。見つめていると心を読まれてしまいそうだ。

「桜か」
「あ、イギリスさん…」

お辞儀をしなくては。
そう頭で反芻するのに、身体は自分のものでないかのように動かない。瞬きを忘れた眼球はじっとイギリスさんを見つめていて、イギリスさんは困った表情で見つめ返してくる。
徐々に顔が熱くなっていくのが無意識でも判った。
まだ、あの世界会議での口付けが頭から離れていないのだ。

「おい、本当に大丈夫かよ」
「え、あ、はい…!」

若干裏返った間抜けな声に更に頬が熱くなる。
そんな私を見て苦笑を洩らしたイギリスさんは、本題に戻るために再び質問を繰り返した。

「日本はいないのか?」
「申し訳ありません、今は少し…」
「ふうん、そうか…」

考えるように顎をしゃくりだしたイギリスさんに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
色々と失礼なことをしてしまった。日本さんはイギリスさんと同盟関係にあるが、私の行いのせいで二人の関係に何らかの影響がなければいいのだが。
悶々とそんなことを頭に思い浮かべていると、結論を出したらしいイギリスさんが顔を上げてこちらに視線を向けた。

「なら桜、少し頼まれてくれないか」
「えっ、私でよろしければ…」

どぎまぎしながらも承諾すれば、イギリスさんは満足そうに目を細めた。

「日本に伝えておいてくれないか。例の件、お前の意見で進めていく、と」
「そ、そんな大切なこと、私なんかで…」
「大丈夫だ。桜が信用出来るとは判っているからな」

優しげに顔を緩めるイギリスさんにむず痒い心地になる。
確か日本さんは、イギリスさんは歴史と紳士の国だと言っていた。紳士とはどのようなものか判らないが、今感じているのが紳士なのだろうか。何とも恥ずかしい、しかしイヤとは思わない気分だ。
真っ赤な顔を見られたくなく、私はこくりと頷いたまま地面に視線を向けた。
すると顎にイギリスさんの手が添えられ、くいっと上を向かされた。

「アメリカにキスされたらしいな」
「え、あ、あの…っ」
「どこにされたんだ?」

笑顔で間近に迫られては心臓が保たない。
私は観念して、アメリカさんに口付けられた場所を震える指で指し示した。

「なるほどね…俺が前にしたところじゃねえか」

声が低くなり、特徴的な眉がぴくりと動いて目が細くなる。
先程までの優しげな表情とは違い、悔しさや苛立ちが見え隠れするものだった。
その変化に戸惑っていれば、にやりと弧を描いた唇が頬に触れる。この間の口付けより長く、ちゅっと音を立てて離れたそれに私はそのまま腰が抜けてしまうくらいに動揺した。

「アメリカにやるつもりはさらさらねえよ」

このまま腕の中で溶かされてしまうんじゃないだろうか、と頭の隅で危惧しながらも、力の入らない身体をイギリスさんに預ける。

「すみません…っ」
「構わない。女性に優しく、それが紳士たるものだからな」

柔らかく抱き締められた腕の温かさは間違いなく優しいものだ。
紳士って素敵かもしれない。
そう思いながら、恥ずかしさで真っ赤に染まった顔をイギリスさんの服に押し付けた。









星を不法投棄
(卑怯な行為だけど、)



―――

押しの強い外国勢にたじろぎ気味主人公→いきなりの思いやりある優しいイギリスの行動→つり橋効果に近い形でときめく。
多分この方程式をわかっててイギリスはこうしたんだと。

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あきゅろす。
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