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世界はキミのもんだ!
言葉の壁、切り崩します(イタリア、ドイツ)
「桜ちゃーん!」
「イタリアさん、ドイツさん…」
「会いたかったでござるー!」
「え」

どこかで感じた覚えのある衝撃を受け、私はお二人に応えようと上げかけた手をそのままに硬直した。
つい最近。しかも同じように国という身分の方から聞いた言葉に類似している。というかそれは明らかに彼が使っていたものと同じだった。

(武士言葉、広まってる…!)

前例では我らが祖国の仕業だと判明したのだが、今回はどうなんだろうか。

「え、あ、あの…イタリアさん?」
「どうしたでござる?」
「何で語尾に“ござる”をつけるんですか…?」
「これがちゃんとした日本語なんでござるよねー? 日本から聞いたでござるよ!」

ああ、ダメだ。完璧に騙されてる。
思わず痛む頭を押さえながら、イタリアさんのアメリカさんと並ぶ純粋さに感服する。
しかしこちらとしてはどう対処すべきか困る。綺麗な外見で少し片言な喋り方の外国の方が武士言葉を使うのは、申し訳ないが凄く面白く聞こえてしまうのだ。
先程から一言も話していないドイツさんに助けを求めようと視線を向ける。ぱちり、と一度瞬いたドイツさんは口を開いた。

「ああ、俺も驚いたでござる」


驚いたのはこっちですよ。
ぽかんと間抜けにも口を開けたまま固まってしまう。
まさか、イタリアさんよりは騙されていると気付く可能性の高いドイツさんまでもが武士言葉を使うとは。
吹き出しそうになるのをこらえながら、私はお二人に説明すべく口を開いた。

「…お二方、その言葉は武士言葉といって、今の時代では使われない言葉なんです」
「ヴェー? でも日本国の映画でよく使われてるござるよ?」
「それは映画での世界観であって…何百年も昔の話の映画なら使いますが、今は話し言葉としては使いませんよ」
「使わないの? これせっかく練習したのに…ござる……」
「そうか、違うござるか…」

明らかに落ち込む二人を見て、何だか悪いことをしてしまったなあ、と思う。アメリカさんと同じならば、私とお話しようと努力されたのだ。自惚れでなければ、の話だが。

「え、えっと…なかなか上手いと思いますよ、二人とも」

付け加えたようだが、二人は打って変わったように表情になる。何だか良心が痛んだが、まあ本当に上手くなってらっしゃるんだからウソにはならないだろう。

ちらりと視線をずらすと、遠くの物陰でこちらを見ながら笑いをこらえている日本さんが見えた気がする。



言葉の壁、切り崩します


―――

イタリアのござるはまだ許容範囲だけど、ドイツのござるは破壊力高そう。

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あきゅろす。
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