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世界はキミのもんだ!
世界を始めよう(オール)
今日は日本で世界会議が行われた。
日本で重役の父はそれに出席。その父に異国と触れ合うことの大切さを推され、私も共に会議場所まで来たのだが。

「…どうしよう」

広い屋敷は日本の作りと違い、同じような扉ばかりの廊下ばかりで、どこから入ってきたのかももう判らない。
そう、父が少し他国のお偉いさんと話している間に少しうろうろしていると、見事に迷ってしまったのだ。
時間的には既に会議も終わっているはず。父も私を探しているかもしれない。
とにかく、この場から動かなくては。
取り敢えず目の前の扉に入ろうと手を伸ばした瞬間。

「お前、日本人か?」

流暢な英語を背中から投げ付けられて、私はびくりと肩をすくめる。
英語はさっぱりなので何を言っているかは判らない。
振り返れば、金髪の男性が立っていた。スーツをかっちりと着ていて、真面目そうな雰囲気が伺える。

「え、えーと…」

取り敢えず作り笑いをしてその場を逃れようとする。
下手なことをして恥はかきたくない。ただでさえ外国の方なのだ、日本国の悪いところは見せられない。
苦い笑みを見た彼は、顎に手をやりながら思案しだす。
スーツ姿からすると、少なくとも偉い人、もしかすると国かもしれない。
そんな想像が更に私をびびらせる。

「お前、“桜”か」
「え、」

何で私の名前を知っているのだろう。
驚いて次の言葉が出ない。そんな私を助けてくれたのは、反対側から走ってきた日本さんだった。

「桜さん!」
「日本さん! どうして…」
「お父様が探してますよ。私たちもその手伝いを」
「す、すみません…」

恥ずかしさで真っ赤に染まった頬を押さえる。

「あの、こちらの方は…」
「ああ、彼はイギリスさんですよ」
「イッ、イギ…!?」

ばっと振り向けば、イギリスさんはなんとなくわかったのだろう、一つ溜息をついて日本さんを見やる。
そして再び流暢な英語。

「こいつ、お前の上司の娘なんだろ? 何で俺のこと知らないんだよ」
「桜さんが会議に出向かれたのは今回が初めてなんです」

それに返す日本さんもなかなか綺麗な英語なので、私には二人がどういった会話をしたのかさっぱり判らなかった。
日本さんの言葉に納得したのだろうイギリスさんは、ああなるほど、といった顔でこちらを見る。

「あー…」

思い切り目を見られるが、目を合わすという行為が苦手な私は静かに視線を逸らす。
何だ、外国の人はこんなに真っ直ぐに見つめてくるのか。

「…お前んところは目を合わさないやつばっかりだな」
「お国柄でして」

再び英語で会話をする二人に引け目を感じて、視線を逸らす。
ふと視界に大きな影が入り込む。ぱっとそちらを見れば、大きな身体の人ががこちらに歩み寄ってくるのが見えた。
彼は長い首巻きを揺らめかせながら軽く片手を上げ、私をちらりと見てから二人に話し掛けた。

「桜さん見つかったの?」
「はい、お陰さまで。ご協力感謝します」

片言ながらも私の名前が出てきたので、おそらく彼も私を探してくれていたのだろう。英語とはまた違った響きの言葉を使っているから、どこか別の国の方だろうか。

「なんだいなんだい、イギリスが見つけたのかい? ここは俺が見付けてヒーローになりたかったのにな!」

やけに明るい英語の人も続いてきて、私の顔を覗き込むように見る。どうしても慣れない距離に私は目を泳がせる。

「見つかたあるかー」
「ああ! この俺がばっちり!」
「嘘つけ! お前は後からきただろ!!」

おそらく東洋の人だろう人が英語を使う二人の背に乗るように現れる。
驚いた表情のままその面々を見ていれば、中国語らしい言葉を口にしていた人と目が合った。そしてにかりと笑顔を向けられる。

「お前が桜あるか!」
「え、え」
「はい、見つかりました」

「ありがとうございます」と日本さんが頭を下げる。
その姿にはっとした私は、日本さんに倣って慌てて頭を下げた。私たちの象徴ともいえる彼に頭を下げさせるのは、いくら仲が良くても気が引ける。

「ご、ご迷惑をおかけしました! すみません…!」
「なんで謝るんだよ」
「え?」

イギリスさんが不満げに眉間にシワを寄せる。
言葉はわからないが、なんとなく怒っている雰囲気だった。
何が気にくわなかったのかわからない。助けを求めるように日本さんの着物の裾を引っ張れば、困ったような笑みが返ってくる。

「桜さん、違いますよ」

私より少し高い身長の日本さんは軽くかがんで私の耳元に手をあて、ひそひそと耳打ちをする。
その答えを聞いて、私は戸惑いながらもイギリスさんのほうを向く。

「さ、さんきゅう…?」
「!」

イギリスさんは瞳を見開いてこちらを凝視する。
日本さんの言ったことが間違えているわけはない。発音が違って伝わらなかったのだろうか。
そう不安になるが、その思考は頬に添えられた手によって遮られる。
頬にわずかな感触。

「え、」

何が何だかわからない。
気付けば目の前にイギリスさんの優しい笑みがある。

「どういたしまして」

あまりの驚きに固まってしまう。
男性に口付けられたのは初めてで、反応するどころの問題ではない。
イギリスさんは慣れたものなのか、顔色一つ変えていない。外国ではこれが挨拶なのだろうか。皆さん毎日恥ずかしいと思わないのだろうか。

「あー、イギリスずるいよー!」
「そうだよ。独り占めは許せないなあ」
「我もあるー!!」
「ええ!?」

メガネをかけた人が英語で何かを抗議したのに続いて、傍観していた皆さんも次々と抱き付いてくる。
こういったことに慣れていない私は抵抗も出来ず、ただ硬直するしかなかった。

「日本の子って控えめで可愛いよねー!」
「品があるよね」
「着物可愛いある!!」
「え、何ですか…!? に、日本さん…っ!」

何を言っているのかわからないが、とにかくこの状態は恥ずかしい。
唯一傍観に回っていた日本さんに助けを求めるが。

「何してるんですか…!」
「え、写真です」
「そうじゃなくて…!」

助けてほしいんです。お願いします。
そう口を開く前に、かぶさるように声が掛けられる。

「桜ちゃん、ロシアにくる?」
「中国にくるよろし!」
「いや、ここはアメリカだよな!」
「イギリスもいいところだぞ」
「えー、キミの家のご飯、すごくまずかったじゃないか」
「何だとこの野郎!!」

話を聞いていると、なんとなく彼らの正体が浮上していく。

「あの、もしかして皆さん…日本さんみたいな…」
「そうだよ。れっきとした国だけど」
「…!」

抱き付かれた態勢のまま気絶しそうになる。
何で、そんな偉大な人たちが私なんかに。

「逆ハー…ありですよね」

日本さんがそう呟いたのは、破裂寸前の私の頭では聞き取れる余裕がなかった。







世界をはじめよう
(何が待っているのだろうか)



―――

さっぱり文章がまとまらん…!
なんといいますか、言葉の壁とか人種の違いってのを明らかにしたお話が書きたかったんですよね。そういや彼らは普段何語を使って会話してるんだろ…

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