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☆☆☆小話
無垢に愛くるしく(☆主人公幼児化)
久し振りに我が家のソファーで寝て、気持ち清々しく起床したら、目の前に見たことのない子どもが興味津々といった顔でこちらを見ていた。目の前というかは、体の上に乗った状態なのだが。

「……」
「……」

子ども独特のくりっと丸い瞳が無垢な視線を絶え間なく投げ掛ける。耐えきれなくなって視線をそらせば、ミサキの困ったような顔が見られた。

「ミサキ…」
「おはよう、六。ごめんなさいね、起こしちゃったみたいで」
「いや、別に…それより誰だ、この子どもは」
「あんたが一番よく知ってる子よ」

そう言われても、こんなに小さな知り合いは記憶にない。少女を見つめ返すように顔を覗き込めば、にぱあ、としまりのない顔で笑みをこぼした。どこかで見たことのあるような。

「……あ、」
「判った?」
「なんで、こんな小さく…」
「大方MZDの仕業だろ」

あくびまじりのやる気のない声が軽く響く。

「けどなかなかやってくれますよね、神様も!」
「お得だよね、ちっちゃいときのは知らないからさ」
「やっぱりちっちゃくてもかわいーよね!」
「そのまま小さくしたみたいだよな!」
「……犯罪、的…」
「ジャックどこでそんな言葉覚えてきたの!!」
「ダメ!! 今言ったらただの変態だから!!」

一気に騒がしくなるリビング。状況についていけない俺は、唖然と兄弟の顔を見ることしか出来なかった。

話を聞けば、この少女はやはり俺の予想した通りだった。この間の猫化同様に起きたらこうなってたらしく、俺が起きるまでかなり兄弟みんなで奮起して落ち着かせたらしい。
修が予想するに、体が小さくなっただけらしい。それにあわせて脳も退化したため、俺たちのことは覚えていなかったらしく、はじめは怯えて泣いていたそうだ。今の顔を見る限り、かなり懐いてはきているよう。

「でも六兄ずるいですよ」
「何がだ」
「僕たちみんな、はじめは泣かれたっていうのに、なんでそんなに懐かれてるんですか」

文句を言うハヤトに苦笑しながら腕の中におさまる彼女を見れば、またしまりなく頬を綻ばせる。そしてその口から一言。

「ろくにいぃ」
「え、今六兄って…!」
「ふーん、少しは覚えてるのかな」
「六兄限定でだけどな」

いつものような彼女ではないけど、こんな無邪気に可愛らしいのも悪くはない。にこりと同じく笑みを作り、頭を優しくなでてやる。そうすれば更に笑みは深まり、舌足らずな言葉がまた紡がれた。

「うふふー、あたし、ろくにいのおよめしゃんになるー…」

予想外の言葉に部屋が静まる。

「ずっ、ずるいよ六兄いいいー!!」
「先輩!! 今の“ハヤトの”に代えてもう一回!!」
「違う違う! ここはリュータだろ!!」

必死に迫りくる兄弟に圧倒されたのだろう、ぽかんとみんなの顔を見ていた当の本人だが、すぐにくしゃりと泣きそうに顔を歪め、俺の胸に泣き付く。

「こ、こあいいっ…」
「お前ら、泣かせるな。恐がってんだろ」
「う、すみません…」
「ごめんなさーい…」
「まったく。少なくとも、お前らには嫁入りさせられないな」



無垢に愛くるしく

―――
やってみたかった幼児化。
「お嫁さん」発言にカジカが食い付かなかったのは、多分守備範囲より小さすぎたからです。カジカはきっと下は一つ違いまでだと思うんだ!

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