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☆☆☆小話
トラジコメディ(学校組)
ささやかなシュークリームに対する学生組のいたずら


普段はにぎやかなDes家だが、休日の今日は比較的静かだ。
学生組しかいないDes家のリビングを占領してテレビゲームを満喫していたリュータたちに、ニコニコとある意味無邪気な笑みを浮かべて近付いてきたのは林奈である。

「なにしてんの?」
「んー、バサラと戦国無双だよ」

テレビから視線を移さずに返事をしたカジカのコントロールさばきは神掛かっている。リュータが圧されるのも無理はない。
ふーんと軽い反応を返した林奈は、カジカとリュータとの対戦の決着がつくまで隣で静観していた。

「あ――!!」
「リュータもまだまだだね」

リュータの断末魔の声を聞き、終わったと同時に口を開く。

「ねえ、見て見て!」
「うわ、修兄の携帯じゃん。どうしたんだよ」
「ジャックに盗んできてもらった!ねー、ジャック」
「…? ねー?」

疑問符付きの相づちを打ったジャックが小首を傾げる。林奈のハートがときめいたのは言うまでもない。
心を落ち着けた林奈は「今からおもしろいことしようよ!」と言い、リュータとタローの間に腰を下ろした。
そして自分の携帯であるかのように修の携帯を操作しだす。

「ちょ、それ修兄のだろ!? ヘタにいじらないほうが…」
「それじゃあジャックに持ってきてもらった意味ないじゃん」

視線を向けることなく返事をしたあと、操作し終わった携帯を掲げて兄弟に説明をしだす。

「これから修の携帯の着信音を変えようと思います!」
「…はあ」
「すみません、先輩。それのどこがおもしろいんですか」

申し訳なさそうにそう聞いたハヤトに一同が同意する。
確かに、着信音を変えたところで何のおもしろみがあるのか。

「違う違う。着信音を変えるっていうか、着信ボイスにしちゃうのだよ!」
「着信ボイスって…誰か持ってるの?」

カジカが首を傾げる。
爛々とした瞳の林奈は、カジカの顔の前に携帯の画面を突き出した。
思わず驚きの声を上げて仰け反るカジカの周りに兄弟がわらわらと集まる。林奈の突き出した携帯の画面には、アイシーレコーダーが起動されていた。
賢いハヤトはいち早く林奈の意図を汲み取る。

「なるほど。これで録音した声を着信ボイスにするんですね」
「そうそう!どう、楽しそうでしょ?」

自分の声が着信音にされるのは恥ずかしいが、それよりも修が驚くほうが見てみたい。羞恥心と好奇心なら間違いなく好奇心のほうが勝る。
それは兄弟全員に共通することらしく、みんなの瞳が輝く。ジャックだけは意味が判っていないようだが。

録音ボタンを押す音がした。



―――



『なあ、やっぱ止めたほうが…』
『え、遅いんだけど。もう録音してる』
『はあああ!? ちょっ』

聞き覚えのある声が耳に入った。
職員室で小テストの採点をしていたときのことだった。放課後といえど何人かの生徒と先生方も職員室に残っている。
その声の主たちはここにはおらず、音源をたどってみれば俺の携帯から聞こえていた。
一体どういうことだ。
職員室全体の時間が止まったかのように静かになり、携帯からの弟や居候の声だけが響いた。

『あーもーリュータ煩いよ』
『えっと修兄、聞いてますー?』
『昨日のシュークリームのおかえしだよう!』
『あれは修のための食事だろ。このままじゃ兄弟みんな糖尿病になるっての』

みんなの視線が集まる。
あまりのことに身体が動かない。思考もストップしてしまっている。

『あ、あのね!私新しく修の真似出来るようになった!』
『え、じゃあこの場でやっちゃいなよ』
『さんにーいち、はいっ!』
『あーごほんっ、俺様の美声に酔いな、アーン?』

大音量で聞こえるその声は、本人が聞いてもそっくりで。
職員室から小さな笑い声が生まれる。

『台詞、自分のじゃん!』
『えー、じゃあなにがよかったの』
『シュークリームは世界を救うんだよ、とか』
『うっわ、気持ち悪いくらい似てますねえ、カジ兄』
『どっちかって言うと、めんどくせえ、とかのほうが修兄らしいよな』

携帯から俺の声がたくさん聞こえる。
なにがなんだか理解出来ない。なんだ、なんで携帯からこんなに声が聞こえるんだ。

『じゃーあえて修兄がいわないよーなことをゆーとか!』
『俺様の歌を聞けえー』
『似合わなっ。てかやる気ねえな!』
『少し修寄りにしてみた』
『あー…俺がガンダムだ、とか言ったら気持ち悪いよね』

瞬間、携帯だけでなく職員室内からも爆笑が起こる。

『ガ、ガンダムとか…キャラじゃないじゃない…!』
『目標を狙い撃つ!』
『目標へ飛翔する!』
『武力介入を開始する!』
『止めてー!ガッガンダムこれから見れないー!!』
『ヴァーチェ、ヴァーチェ!』
『やっ、止めええあはははははは!!』

なにかとぶつかったような音がし、兄弟の爆笑する声が聞こえた。
そうか、もしかしなくともこれは…!
今の音で気付いた俺は、携帯を引っ掴んで電源を切った。案の定、音はぷっつり止んだ。
まさか着信音に自分たちが録音した声を入れてくるとは。予想外のいたずらだった。

「あいつら…マジぶっ殺す」

携帯がミシリと音をたてたような気がするが、今はどうでもいい。
どうやってあいつらを恐怖の淵へ落としてやろうか。そのプランが頭を占領した。



トラジコメディ
(お前ら、よっぽど死にたいらしいな…)(そそそんなことないおおお!!)(林奈ちゃん、動揺しすぎ)(けど楽しかったでしょう?)(んなわけあるかバカどもが!!)


―――

こういう日常もあったらいいなあ。
てか学生組の雑談ボイスとか売ったらすげえプレミア価値つきそうだよな。少なくとも私はほしいです。
ガンダムネタなのは囃子にガンダム熱もきたからです。二期になってからグラハムまだ見てない…

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あきゅろす。
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