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─────最近、気になり始めたことがある。


今日もとてもいい天気だ。朝、甲板に出て眩しい光に目を細め、俺は一つ大きく伸びをする。すでに作業を始めている下っ派の弟連中に挨拶を返しつつ、俺は後ろ甲板へと向かって歩いた。


そこでは2番隊がエースの指揮の元、戦闘時の連携を取る訓練をしている。前回の失敗を元にここ最近の訓練メニューに取り入れられたものだ。

「だぁから、ダーッと来たらガーッてやるんだって!そしたらダダッてなるだろ?」

エースの説明になっていない説明に隊員たちの頭に疑問符が沸く。重ねて説明を続けようとエースは口を開くが、それは自身の腹の音に中断されてしまった。

「ん、もう朝飯の時間か。じゃあ今日はここまでな!かいさーん」

ざわざわと談笑しながら隊員たちが船内へと入っていくのを見ながら、俺は目的の人物に声をかけた。


「ナマエ」

「あ、マルコ。おはよう。今日は早いな」

エースと何やら真面目に話し合っていたナマエは、俺の姿を視界に入れるとパッと破顔する。その顔に一瞬ドキリと俺の心臓が跳ねたが、努めて冷静に挨拶を返した。

気を使ったエースがこっそりその場を離れたことにも気づかないのか、近づいてきたナマエはその背後にパタパタと揺れる犬の尻尾でも見えそうなほど上機嫌だ。

「今調度訓練終わったところなんだ。朝飯行こう」

「ああ」

ニコニコと笑顔が絶えないナマエの顔を見て、ポーカーフェイスがキープできなくなった俺もつられて笑みがこぼれた。


俺とナマエがめでたく恋人という関係に収まってから数週間が過ぎた。

あの後、帰りが遅い俺らのせいでモビーでは大捜索網が敷かれていたり、サッチが半泣きでナマエを叱りつけたり(結局ナマエが船を降りる云々の話はサッチの勘違いだったのだが)、しばらく泣き止めなかったナマエの目が真っ赤になってしまい船医が「まだ炎症してるなァ」と勘違いしたりと色々あったのだが、まあどれもこれも今となっては笑い話だ。


長く仲間として傍にいたナマエとの関係が変わり、じゃあ具体的に何が変わったのかと言われると実質ほとんど何も変わっていない。怪我が治ったナマエは相変わらずエースのサポートに明け暮れているし、俺は俺で自分の隊のことや船全体のことなどで忙しい。飯時などに示し合わせて時間が取れるくらいで、二人きりの時間など現状では夢のまた夢だ。


普通付き合い始めの頃っていうのは色々と我が儘だったり要求だったりが出てくるもんなんじゃないか、と俺は思うのだが、ナマエは俺に全くと言っていいほど何も求めてこない。多少仕事が遅れてもナマエとの時間を作りたいと言う俺に対し、ナマエはガンとして「やることはちゃんと済ませてから!」と譲らないのだ。

まあ、エースがとっとと一人前になればナマエももっと暇が出来るだろうし、ゆっくり二人の時間を過ごすのはそれからでも遅くはないから、別にそれならそれでいいとは思うのだが。


それにしたって、とも思う。

もう少し、ナマエも何か「ああしたい」「こうしたい」と言ってくれてもいいんじゃないだろうか。これじゃ、まるで自分だけが舞い上がっているみたいだ。





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あきゅろす。
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