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02



朝食を黙々と食べ進めていると、「お前なぁ」という声と共に隣にマルコとサッチが座る。

「加減を知れよ。ナマエ、お前に嫌われてるって落ち込んでたんだからな」

うぐ、と口に詰め込んでいたパンを飲み損ない、慌てて水で押し込む。盛大に蒸せた俺の背中をサッチがさすってくれた。


こんな所で堂々何を言うんだ、と周りを見回すと、食堂内の随分と離れた場所でナマエが別の隊員と談笑しながら飯食ってるのが見えた。良かった、少なくとも本人には聞かれていない、とホッと息を吐く。

「笑ってるじゃん。あれで落ち込んでんのかよ」

フン、と鼻をならしてそっぽを向くと、サッチが呆れたようにため息をついたのが聞こえた。しかし続いて発せられたマルコの言葉に、俺の心臓が跳ねる。


「照れ隠しもほどほどにしねェと、その内本当に寄って来なくなるよい」

「……べ、別に…俺は、照れ隠しとか、そういうんじゃ」

「お前がそういうつもりじゃなくてもそうとしか見えないっての。まったくよー。拒絶が行きすぎて本人には誤解されてるしなぁ。お前、結構そういうの下手なのな」

「だから照れ隠しじゃねーって!」

「あいつ面倒見いいからなぁ。隊関係なく下っ派からは慕われてるし、まぁエース一人が避けたところで別に痛くも痒くもないかもしれないけど」

「…………」

「マジ凹みすんなよ…悪い、言い過ぎたよ…」

「そんなに凹むくらいなら普通に接すればいいんじゃないのかよい」

マルコの言葉に俺はうぐ、と声を詰まらせた。


マルコの言い分はもっともだが、そもそも俺には『普通に』接するって具体的にどうしたらいいのかが分からない。俺だってマルコやサッチたちと話す時のように普通にしてたいと思ってる。

だけど、ナマエを目の前にすると途端にぐわーって恥ずかしくなって直視できなくて普通じゃいられなくなって、つい手が出たり暴言が口から飛び出してしまうのだ。暴発して火を出さないようにするだけで精一杯なのだ、本当は。


ただ会話するだけならこんなにも困らないかもしれない。だが、ナマエはとかくスキンシップが激しい。俺が仲間入りしたのはそんな昔ではないが、それでもナマエほど頻繁にくっつきたがる人間は見たことがない。さっきだってそうだ。

「寒い」と言っては羽交い締めにし、「丁度いい高さに頭が」と言ってはぐりぐりと撫でまくり、「枕が欲しい」と言っては勝手に人の膝で居眠りを始める。俺がどんなに抵抗しても全然めげないし、人の都合もお構い無しだ。

それが嬉しくないかと言えば……たぶん、嘘になる。しかし、それ以上に照れや恥ずかしさが大きくて、俺にはそう簡単には受け入れられないのだ。





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