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02

使いを終え船に帰ってくると、目的の人物は甲板に出て周りに指示を出してる最中だった。俺らの姿に気づいた隊長が軽く手を挙げ労いの言葉をかける。

「おぉ、ご苦労だったな、二人とも。どうだった」

「なんとかリストのものは揃いましたけど…、やっぱり全体的に売り渋ってる気がします。オヤジの名前を出してやっと、って感じでした」

「こっちも似たようなもんでした」

「あーそうかぁ、やっぱりなぁ」

そう言って隊長はため息をついた。


「ロジャーが余計なこと言って死にやがったからなァ」

「オヤジ」

船内から出てきたオヤジも、隊長と同じようにため息をつく。

「海賊の数が数年前と比べて倍以上になっちまってんのさ。どいつもこいつも秘宝を求めて海に、ってな」

「まったく、ギャンブルじゃねェんだってんだよなァ」

手渡したリストを丁寧にたたむと、隊長はガシガシと頭を掻いた。


今から数年前、俺らが見習いを抜けるかどうかという年齢の頃、ロジャー船長が処刑された。

直接話したことはなかったが、彼は海賊であれば知らない人間などいないほどの人物だったし、オヤジに会いに来ているのを何度か見たことはあるため、全く知らないというほど遠い間柄ではなかった。

あれほどの人が処刑されたことが俺は今でも信じられない。捕まったことも意外だったし、そういう最期を遂げる人とは思えなかったからだ。しかし現実、彼の死ぬ間際の言葉で俺らの世界は一変した。

ロジャー船長の残した秘宝を狙い、海賊の数が激増したのだ。増えただけならまだ良かった。問題は、『数だけ』がやたら増えたということだ。

無駄に増えたそいつらのほとんどは町を襲い、村を荒らした。彼らによって根こそぎ奪われ、何もなくなった島をここ数年間で数えきれないほど目にした。

元々歓迎されない立場ではあった俺たちが、それでも町の人といい関係を築いてきたのはひとえにオヤジの努力の賜物だと思う。しかしそれにも関わらず「海賊」というだけで町の人の対応もよそよそしく物資の補充も困難になったし、酷いときは入港すら断られる。自分達は町を襲ってなかったとしても、町の人たちにとっては知ったことではないのだろう。海賊、それだけで顔色を変えられるのもいい加減もう慣れてきている。





今日はもう終わりにしていいぞ、と隊長に言われ、俺とマルコは連れだって食堂へ向かう。日中あっちこっち歩き回ったからかなりお腹ペコペコだ。

「あー…マルコ、今日アレ頼んでいい?」

通路をフラフラと歩きながら俺がそう頼むと、マルコは「言うと思った」と言わんばかりに苦笑いをこぼした。

「仕方ないねい。ちゃんと飯食って風呂入ったらな」

「やった」

少し元気が出て足取りも軽くなる。食堂に入ると、いつものメンバーがいつもの場所に陣取っていた。近づいても俺らの姿に気づくことなく、何やら熱心に眺めている。

「ただいまー、サッチ。ジョズ」

「ん?おぉ、おかえりー」

顔をあげたサッチがニカッと笑みを浮かべる。ジョズは静かに片手を挙げ「おかえり」を表すと、隣の椅子を引き出してくれた。

「ありがとう。他のみんなは?」

「もう飯食って部屋戻ったよ」

「お前ら何見てんだよい」

俺の分の夕食も持ってきてくれたマルコは椅子に座ると、二人が睨むように見つめるそれを横から覗き込んだ。つられて俺も覗き込む。

「えー、『ボルサリーノついに大将昇格、新体制で海賊をどこまで追い込めるか期待がかかる』…ふん」

読み上げたはいいものの、興味ないとばかりにマルコが新聞から目を離した。

「こいつ最近よく見るよな。海賊を100潰した功績を買われて昇格だってさ」

「まぁ、特に今は海軍の評判回復に努めなきゃいけない時だもんなー。ただでさえ海賊増えちゃって海軍の手ェ足りてないとか対応遅れが問題だーなんて言われてるし、一般の印象悪いだろ」

「俺らとしてはそのまま底辺まで評判落としてほしいところだけど」

「違いない」

深々とジョズが頷く。

「もし大将クラスがメインで動くならうちも他人事じゃないかもなァ。ロジャー船長がいない今、一番でかいのはうちだろ?海軍が勢力上げて潰しにかかってきてもおかしくはないよな」

「活発に取り締まるなら、ああいう村とか町とか襲うやつらを先にどうにかして欲しいよい。俺らとしても迷惑だ」

静かに食事を進めていたマルコが心底うんざりと言う顔をした。


以前はおいそれとうちに喧嘩を売ってくるやつなどほとんどいなかった。当時からオヤジの名前はかの海賊王と並んで力を持つことで知れ渡っていたからだ。

右も左も分からないような名ばかりの海賊が増え、オヤジを知らないまま喧嘩を売ってくるやつが増えた。戦闘頻度が以前に比べて格段に上がり、休む暇もないほどだ。実践経験が増えるのはありがたいが、正直まともな戦い方を知らない連中の相手ばかりは気が滅入る。マルコがうんざりするのも、とてもよく分かる話だった。




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あきゅろす。
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