敵船へ乗り込んでいった2番隊を見送りながら、モビーでいつでも動けるように待機する。 自分の視線の先には、身軽な動きで敵を倒していくナマエの姿だ。 前に出るというよりは、一歩後ろに身を置いて仲間の動きに合わせて闘っている。 後輩に実践経験を積ませられるように、集団戦闘でナマエがよくやる方法だ。
「おぉ、いいな。いい動きだ。余裕で優勢じゃねェか」 隣で戦闘を眺めていたイゾウが呟く。 すでに敵船はほぼ全滅。あともう一押しで、完全に降伏するだろう。 まぁ、そんな心配するほどのことでもないかよい。 どちらかと言えばエースに隊長としての経験を積ませる意味の方が強い今回の戦闘は、危なげなく終わりを迎えようとしていた。 ふぅ、とため息をつく。 「ナマエの異動がまだ不満か?」 ため息を聞かれ、イゾウが視線だけをこちらに向けて尋ねた。 そんなんじゃねェよい、否定はしたが、その声に説得力の欠片もないことは俺が一番自覚していた。 「俺はいい機会だと思うがね」 「何のだよい」 「ナマエは長くお前に付きっきりだったじゃねェか。まぁ補佐なんて立場だったから仕方ないが、ちょっとそればかりになり過ぎてたろう。少し他所を見る時間も必要だ。お前にとっても、ナマエにとっても」
付きっきり。そうだっただろうか。 確かにナマエはサポートが必要なときはいつでも居てくれたし、俺も頼りにしていた部分は大きい。 ナマエが2番隊に移り大小至る所で不都合が出て、ナマエが抱えていた仕事量に誰より自分が一番驚いた。 だがイゾウの言い方はまるで…ナマエが他の色々な事を捨てて、俺に尽くしていたかのようではないか。 そんなに拘束してねェよい、そう言いかけて、本当にそうなのか?と自問する。 現実俺は、ナマエが居るお陰でどのくらい助かっていたかを居なくなった後で知った。 そんな俺が本当に彼を正しく理解しているとは思えなかった。
大きな爆音と共に、戦場になっていた敵船で火柱が上がる。 普通ではあり得ないその大きさに、俺らは異常が起きたことを知った。 モビーに一気に緊張が走る。 俺はオヤジの指示を仰ぐより先に、咄嗟に姿を変え飛び立っていた。
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