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あの日、人の気配を探りながら歩いて行くと島の奥に一件の屋敷を見つけた。町の簡素な雰囲気に対してずいぶんと大きな屋敷で、そこも同じように荒らされていた。だがどうにも怪しい感じがしてな。少し、中を調べることにしたんだ。


屋敷の中では何人もの人間が死んでいた。どの部屋も滅茶苦茶になっていたし、おそらく町と同様海賊が押し入ったんだろう。

薄暗い地下の更に奥の、まるで隠されるように設置された地下牢で、マルコが海楼石に繋がれていた。頑丈な鉄格子と幾重にも重ねられた鍵。俺がやっと届くかと思われるほど高い位置に、外と繋がっているんだろう小さな空気穴が一つ。それすら鉄格子がしっかりとはめられていて、とても子供が一人で脱出できるような場所じゃなかった。


「押し入った海賊も見つけられなかったんだろう。見たところ屋敷は貴族の所有物のようだった。マルコはおそらく……」

「……ヒューマンショップか」

「……」

「………はあ」

頷いたニューゲートを見て俺は深いため息をついた。


海楼石にヒューマンショップってことは、何かしらの珍しい悪魔の実でも食っちまったってところだろう。そこに目をつけられ貴族に買われたのか。漸く納得する。だから、ニューゲートはマルコを絶対連れていくと言って聞かなかったのか。


「能力は?」

「分からん。本人に聞くわけにもいかないだろう。それが原因で買われたんだから。そもそも本人が悪魔の実を食ったことを自覚しているのかも分からん」

「まあなあ……」

「マルコの能力については一旦保留だ。どっちにしろあの幼さだ、戦場に出すわけにもいかないし、能力をうまく制御できるとも思えん」

「……あのなあ、ニューゲート。お前がマルコを気にかける理由は分かったけど、それでもガキを海賊船に乗せるのはどうかと思うぞ?自分の身も守れない、食いぶち稼ぐことだってできない。言い方は悪いがお荷物以外何者でもない」


自分のことを棚に上げて、と言われてしまえばそれまでだが、やはり危険なことに代わりはない。それは俺らにとってでもあるし、マルコにとってもだ。今の俺らに、あの年齢の子供を乗せて航海できるだけの力があるかは甚だ疑問だ。


「分かっている。それでも、マルコを見放してはいけない気がしたんだ。もしあそこにいたのが能力者でなかったとしても同じだ。偽善でも自己満足でも、俺は誰一人切り捨てたくない。俺の視界に入るなら、俺に求められた助けなら、すべて拾っていきたいんだ。俺の手に余るかどうかなんてのは俺自身の問題だ」

「………」


あの屋敷の地下牢でマルコを発見した時、ニューゲートはどんな気持ちだったのだろう。まだ親の庇護下にいるような小さい子供が、周りを石壁で囲まれた暗い部屋に一人閉じ込められている。海楼石に繋がれ、自由に歩き回ることも許されない状態で。


「ナマエ、お前には迷惑をかけるが」

「………はあ。わぁーかったよ。船長はお前だ。お前がそこまでそうしたいってんなら口を出さねー。……俺だってお前に賛同してここにいるんだ」

「そうか。助かる」

「ただし!あいつが原因で俺やお前や、船そのものに危険があるって判断した場合は容赦なく下ろすからな。それからあいつを一切甘やかさないこと!」

「ああ。分かった」


不安がすべて無くなったわけではない。むしろマルコが能力者であることが分かり、不安要素は更に増えてしまった気がする。だけどそこまで言われたらもう折れるしかないじゃんか。俺より遥かに覚悟を決めてるニューゲートに、これ以上何を言えるというのだ。


それでも、漸く一人目だ。ニューゲートが望む、家族一人目。

幸先不安ではあったがニューゲートはとても嬉しそうに笑っているから、とりあえず今だけはその不安を忘れてもいいかと思えた。





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