こいつがどれほど家族が欲しいと思っているのか分かってるつもりだ。つもりだったけど!けどさ、さすがに子供乗せるのは予想外っていうか。 だって子供だぞ!?しかもちょっと前に乳離れしたばっかりですっていう感じの子供だぞ!?
夕暮れで赤く染まるキッチン内で、俺は子供が寝ているのも忘れ大声でニューゲートに詰め寄る。 「ちょっと待て!俺は反対!無理だろ、こんな子供に船旅なんか!ただの船旅ならともかく海賊船だぞ!!」 「いや、こいつは連れていく。海軍にも引き渡さない」 「ニューゲート!」 「船長命令だ」 「……!!」
ちょっと横暴すぎるよニューゲート! 俺の意見を完全に無視し、ニューゲートはその子供を仲間に入れることを決めてしまった。一度決めたことをそう簡単に覆すような奴じゃないことを俺は良く知っている。助けた子供を、どう扱うかも分からない他人の手に渡してオシマイとするような奴でもないことも。 「それより鍋すごいことになってるぞ」 「あ、ああっ!」 俺の背後ではうっかり火にかけすぎたスープがグラグラ煮立っていた。慌てて火を止めお玉でかき混ぜる。 「焦げてない!セーフ!」 「………んー」 ニューゲートの腕の中から小さな声がした。ハッとして俺は慌てて口をつぐみ、胡座をかいて座るニューゲートの腕の中を覗き込んだ。
ゆっくりを目を開いたその子供は、覗き込む俺とニューゲートの顔を交互に見渡した。初めて見たその子供の目は、綺麗な青い色をしていた。海の色で、空の色だ。パチパチと瞬きを繰り返し不思議そうな顔で首をコテンと傾げた。
「起きられるか」 「………」 床に下ろされた子供は覚束ない足元を一瞬ふらつかせる。椅子にしがみつき間一髪転倒は免れ、キョトンとした顔のまま周囲を見回し数歩足を進めてから「あっ」と声を上げた。 「……かいろうせきは?」 「え?」 「つながないで、いいの?マル、好きに歩いていい?」 「??」 言っている意味がわからず俺は首を捻った。なんだろう、何の話をしているのかサッパリ分からない。海楼石って言った?
俺が返事に困る一方で、ニューゲートは彼の言葉を正しく理解したらしい。 「いいんだ。ここでは誰もお前を繋がない。お前はもう自由だ。歩くのも走るのも、好きにしていい」 にっこりと笑顔を見せ、優しくそう言った。子供はパアッと明るい顔を見せると、ニューゲートに抱きつき「ありがとよい!」と嬉しそうな笑顔を見せていた。
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