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04




部屋に戻り甲板から微かに聞こえる喧騒を聞きながら俺はベッドに寝転がると、先ほど何の気なしに目にしたある物に思いを馳せた。ロイと、隣にいた嫁になるナースの指にあったシンプルな指輪。あれを見た瞬間、「あ、そっか。ロイ本当に結婚するんだ」なんて妙な実感が沸き起こった。


「結婚かー……」

あいつが結婚することはかなり驚きだった。

別にダメなわけでもないし不可能なわけでもない。だけど、海賊やってる時点でそういう未来は選択しにくいという先入観が俺の中にはあった。自分自身も意識したこともなかったせいか、自然と結婚なんて考えは頭から抜けていたのもある。

だから10代の頃からずっと一緒に生活して来た自分の同期が結婚するなんて話になり、急にそれが身近なものになったように感じる。あまりに急に近くなりすぎてむしろ戸惑うくらいだ。


俺がもし結婚するなんてことになるんだとしたら、………そりゃあ、マルコとなんだろうなあ。

ぼんやりと考えてみる。同性同士での所謂「婚姻関係」っていうのがどんな形になるのかイメージしにくいが、どうなんだろう。今だって一緒に生活しているわけなんだから、ある意味では結婚してるようなもんだ。部屋だって一緒だし。家族だし。


「んー、なんか違うな」

今の生活がそのまま結婚生活って言われてもなんか違う気がする。全くピンと来なくて俺は首をひねった。

せっかくならもう少し特別な感じが欲しい。ここが不満なわけじゃないけど、オヤジの元にいる以上やっぱり家族というか兄弟というか、そういう感覚の方が強い。だけどじゃあどんなのがいいのか、と考えを巡らせてもどうにも具体的な想像が浮かんでこなかった。

もしかしたら俺は、自分で思っている以上に現状に満足してるのかもしれない。ああなりたい、こうなりたいっていう希望が浮かんでこないなら、きっとそういうことなのだろう。だって今この状況以上に幸せなことなんてあるわけないし。


うん、そうだな。

別に俺は、一緒にいられるなら。結婚とかそこまででも。


「………。わ!わ!恥ずかしっ!!」

急に恥ずかしくなった俺は、ベッドでジタバタ悶絶して、今想像したことを慌てて頭から掻き消した。うわ、びっくりした!自分の思考に自分でびっくりした!なんだよもう!


ロイの幸せオーラに当てられてすっごい恥ずかしいことを考えちゃった気がする。もー!今のことは忘れよう。

枕に顔を埋めて、落ち着くまでしばらく足をバタバタさせた。


………。でもそうだよな。

結婚とかいう約束が無かったとしても、ずっとこのまま一緒にいられるならそれでいい。

年を取っておっさんになっても、顔にシワが増えておじいさんになっても、それでもまだマルコの隣にいられるのであれば。


ゆっくりと押し寄せる睡魔に勝てず、俺はそのまま眠りについた。

見た夢の内容は覚えていない。けど、きっととてもいい夢を見ていたんだと思う。翌日目を覚まして寝惚け眼のままベッドの上でぼんやりしていると、すでに起きていたマルコが「昨日寝ながらニヤけてたよい」と言った。

昨夜あんなことを考えて一人はしゃいでいたことは内緒だ。





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