you AND me


「まあ、要はさ、人間1人でも生きていける奴と1人じゃ生きていけない奴の両方が居るってだけで」



無理に結論は出さなくていいんじゃねえ?
彼はそう言った。






転入生が来た。
転入生の見た目はボサボサ眼鏡に黒縁眼鏡という、オタクと言うにはオタクに失礼すぎる、がり勉と言うにもがり勉にも失礼なほど正直気持ち悪い格好をしていた。
転入生は人を見かけで判断するのは良くないと、そんな奴とはこっちだって友達になりたくないと言ってきたが、人間第一印象というのは大切だしある程度の清潔感というものはマナーだと思う。
――転入生は押しつけがましい。

俺は1人が好きだった。
1人じゃなかったとしても大人数で居るのは苦手だった。
友人はそれを知っているし、学園の者ならばみんな知っていた。しかし、転入生は元々学園の人間ではないため知らなくて当然――だからちゃんと言ったのに。
転入生は聞いてくれなかった。
――何を勘違いしたのだろう。
偶々同室者は俺で、その時俺は機嫌が悪くて、俺は所謂不良という奴で。
運が悪かったとしか言いようがない。
転入生は愛されて育ってきたのだろう。拒絶されることを知らないのだ。

転入生は見た目とは違い、明るく素直な性格だった。
それ故に人を信じられなくなっていた生徒会の奴等を虜にし、彼等は転入生を溺愛するようになってしまった。
周りへの影響を考えずに生徒会は行動するから親衛隊が動き出してしまい、転入生への陰湿ないじめや呼び出しという制裁が始まってしまったのだった。
生徒会は頭も見た目も家柄もある優れた者の集まりだと思っていたがただのバカなんじゃないかと最近は思うようになった。
彼等は仕事をしなくなってしまった。
転入生を構い倒すのに忙しくて。


俺の友人は生徒会長をしていた。
彼も最初は他の役員が興味を持った転入生に興味を持って近付いたこともあったが、彼は何だかんだ自分の親衛隊の統制をしているし隊長にちゃんと言っておいたらしい。
彼の親衛隊長も優秀な人で個人的には結構好感が持てた。
――しかしそんな彼もいい加減転入生の偽善には嫌気がさしたらしく、自分から話しかけたりはしなくなった上、出来るだけ関わらない様にしているらしい。
と、自分で言っていた。

生徒会でまともに仕事をするのはその生徒会長ぐらいになってしまったわけで、書類にも締め切りがあるため彼は他の役員の分もせざるおえなくなってしまった。


転入生は俺は嫌だと言ったのに、無理やり部屋から俺を引っ張り出して生徒会の連中と仲良くさせようとしてきた。
しかも生徒会は睨んでくるし。
怖くもないけど。

ああ、こういうのって有難迷惑っていうのかな。……全く有難くない。
日々ストレスはたまる一方で、部屋には帰りたくなくなっていた。


そうして俺は生徒会の特権で他よりも広く、1人部屋な数少ない友人の内の1人である生徒会長の部屋に住みついた。


「お前なあ……板屋が心配してたぞ?アレもいい加減ウザいんだが」
「……アイツ無理。俺は1人がいいつってんのに。何が「俺はお前がホントは優しいって分かってる!」だ。何も知らないくせに」
「ああ……」
「ああ言うのを偽善者っていうんだ!今まで散々天音の事を偽善者だと言ってきたがアイツに比べれば天音なんかまだマシだと思えてくる」
「まあ、天音はな。あれはもはや悪人だ」


譲が苦笑する。言われてみれば天音の野郎は偽善者通り越して悪人だ……。
なんで気付かなかったんだ俺。
俺がぶちぶちと言っていると部屋のインターホンが鳴った。ここは譲の部屋だから譲に客か?俺ここの事あいつ等にしか言ってないし。
どうせあいつ等はこねえだろ。
上がって来た人物を見ると譲の弟の丈だった。


「あれ、槇さんココにいるってマジだったんだ。転入生が騒いでたけど」
「あー。悪いな、煩かっただろ」
「ん?まあ俺は大丈夫。遠くから眺めてただけだし。――それよりあの転入生。そんなに酷いんだ?」


――温厚な槇さんが耐えられないほどなんて。
丈はそう言う。
幼馴染の譲の弟の丈も幼馴染な訳で、俺の性格については十分知っていた。
丈はこの学園の1年で、時期生徒会とも言われている。
流石は譲の弟。


「俺には人間が分からない……」
「槇さんもまたそんな唐突に面白いことを言うね」
「あの転入生に相当イラついてんだろ」


コーヒーを淹れて戻ってきた譲が呆れた顔をする。
俺はそのコーヒーを受け取り啜った。
……うま。こいつ、いい豆使ってんな。


「転入生に何されたの。槇さん軽く人間不信になりかけてるけど」
「譲、説明してやって」


俺はもう何もかもを放棄して、コーヒーを飲むことだけに全力を注いだ。
ああ、何て体力の全力の無駄遣い。
……転入生の事なんてもう思い出したくもない。



こんなに人間を嫌いになったことはない。



10.9.27


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温めていたと思われるものを発見。
何カプなのか決まってません←
続きます!


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あきゅろす。
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